どこでも手に入る身近な花を、手持ちのグラスやマグカップ、お皿などを使って手軽に生けてみませんか?花道家・大久保有加さんが贈る、ハッピーでポジティブな花のある暮らしのエッセイといけばなレッスン。今回の花材はアジサイです。
生け花・文 : 大久保有加 Yuka Okubo / 写真 : 岩田えり Eri Iwata
涼しげな色合いを楽しむアジサイのアレンジ
梅雨どきから初夏にかけて咲くアジサイは、日本が原産。ドームのようなこんもりとした形がすてきです。咲きはじめから、少しずつ色を変えることから別名「七変化」とも呼ばれます。
今回の花材、アジサイ。切り紙細工のような繊細な花びらに見えるのは花弁状に変化したガクで、本当の花はその中心にある小さな点なのです。
アジサイの水揚げのコツ
青のアジサイは低めのガラスの器で涼やかに。添えたギボウシの葉脈がきれいです。
今回花器として使ったのはこんな身近なとっくりとおちょこ。
春から夏へ、青の花の季節。
1年の中でも、青の花が多く咲く季節の到来です。花菖蒲、デルフィニウム、ブルースター、キキョウ、鉄線、アジサイなど。青は、幸せと平和の象徴の色。和の花も多く、凛とした強さとはかなさを合わせ持ち、神秘性が潜む青の花たちの存在感は格別です。
青い花には青色色素がありますが、バラにはこの色素がないことから「不可能」の代名詞だった青いバラ。バイオテクノロジーの技術と研究者の熱意によって、2004年には、青いバラの開発の成功が世間に発表されました。不可能に挑戦した夢の実現、自然にはない人間が求めた美でもあります。
技術の進歩による人間社会の発展、それによってもたらされたもの。私は時々、先人たちが茶を立て、花を生けた、その当時の人々に想いをめぐらせてみたりします。刀の一振りで、一瞬のうちに命が尽きてしまうかもしれない状況で、死と常に背中合わせの時代。「一期一会」の言葉の重みには、「今、この瞬間」への圧倒的な「生への意志」が存在しています。
だからこそいただく一服のお茶、1輪の花を生けることを尊ぶ心が生まれたのでしょう。一瞬一瞬体験する自分の人生。昔の人たちは自らの本能を震いおこし、現代の私たちよりも感受性を働かせるのが上手だったような気がします。
雨音が続く日々が過ぎれば、いつの間にか空は透明度を増し、夏の気配に。旬の花の発する気配をも自らのエネルギーに変えて、両手で夏の扉を大きく開けていきましょう。