時を経るごとに愛着が湧く茶筒。
温かな光沢を見ると、きっと大切な人に贈りたくなる。

なめらかな質感と上品な艶を持つ茶筒は、一度出合ったら忘れられません。今回は創業140年、京都が誇る茶筒の老舗を訪ねました。文明開化の時代に開業したから「開化堂」。英国からブリキが輸入されたことをきっかけに創業されました。独自の製法は初代が考えたもので、130以上に及ぶ工程はほぼ変わらず現代に受け継がれています。

現在お店を主に切り盛りしているのは6代目の八木隆裕(やぎたかひろ)さん。普段は5代目の八木聖二(やぎせいじ)さんをはじめ数人の職人さんとともに、離れの工房で茶筒作りに励んでいます。

「茶筒は全てが手作りで、胴はまっすぐに見えますが、実は微妙に膨らみをつけています。これも気密性を上げるための工夫で、職人の洗練された感覚だけが成せる技です」

蓋を胴の口に合わせると、驚くことに自ずとスーッとしまる。これは胴と蓋の直径が計算され尽した証拠です。隆裕さんいわく、この合わせ目を調節するのが一番難しい作業。先代が持つ繊細、精緻な技術を何年もかけて感覚で覚えていったそうです。

取り口と呼ばれる道具の上で蓋を叩き、直径を調節する。

以前海外に向けてみやげの販売をしていたこともあり、隆裕さんは数年前から茶筒の海外出品を始めています。

「お茶文化のあるイギリス、台湾はもちろん、ロサンゼルスやニューヨークなど各国に販売しています。はじめは手作りということに驚かれました。この精密さは機械じゃないかって」

市場を海外へ展開しながらも、根底にあるのは昔から変わらない茶筒の製法。修理も受け付けている開化堂には、親子3代にわたり、100年以上使われた茶筒が修理に来ることもあるそうです。使い込むごとに生まれる色の深み、なめらかになる使い心地は、長い年月人々を魅了してやみません。

「今は商品の背景を〝どう伝えるか〞を大切にしています。言葉で表現するのは難しいのですが、幼い頃から茶筒を打つ音を聞いてきた僕だからこそ、伝えられる良さがあると思います」

伝統を新鮮な目で見つめ、新たなフィールドに発信している隆裕さん。今日も工房では昔と変わらないカンカンカン……とブリキを金槌で打つ音が鳴り響いています。

010年に工房の一部を改装したという店舗。商品は長年住家
胴の底のハンダ付けをする5代目の八木聖二さん。
毎日使うと手擦れで風合いが変化する。
店舗の離れにある工房では、多くの職人が分業で茶筒作りをしている

<商品紹介>

■ブリキFuture Artefacts(つげB)400g

■銅青海波 平型200g 

■真鍮Postcard Teas120g

■銅ミルクジャグ

■真鍮40g 

■銅ティーポット

■ブリキクローバー120g

■ブリキ広口200g 

<開化堂>

京都市下京区河原町六条東入梅湊町84-1

☎075-351-5788

https://www.kaikado.jp

営業時間:9時~18時

定休日:日曜、祝日、第2月曜

最寄駅:京阪本線『清水五条駅』