四季の彩り豊かな日本は美しい庭園づくりに適した自然に恵まれ、各地に優れた作品がいくつも残されています。それぞれに確かな理念とこだわりがあり、つくり手の熱意がにじみ、訪れる人々を魅了します。全国の素晴らしい名庭を訪ねてみませんか?

計算されつくした空間構成。

目の前に開けるのは一面に白砂を敷き詰めただけのいわば無の世界。

一木一草もないその簡素な石の庭で知られる龍安寺は、室町時代半ば、管領細川氏がこの地を譲り受け、禅寺として開いたことに始まります。

方丈の南に開けた庭園は250平方メートルほどの矩形の広がりで、そこに5群15個の石が配置されています。手前に大きい石、遠方に小さい石を置いているのは遠近感を出すためで、その配置は一見無秩序で規則性がないようですが、実に独創的で緻密に計算されつくしています。

それによるのか、方丈から15個の石を確認しようとしても、必ず一つは他の陰になり一度にすべてを見られないという不思議な現象を生じさせています。

また、この庭を立ったまま見ると意外に狭い印象を受け、座ったほうが広く見えますが、それは奥行きを出すために両サイドの築地塀の高さを遠くにいくにしたがい低くするという工夫が施されているからです。

枯山水を代表する白砂の世界は抽象化された庭園技法の極致。無我の境地にいざなうかのように空白が広がる。

この枯山水の代表作をどう解釈するか、大海に浮かぶ神仙の島々、あるいは雲海を抜けて頭をのぞかせる峰々など諸説ありますがいずれともいえません。作者や作庭の年代にしても、明らかにされてはいません。

石庭ばかりでなく、近くには苔に覆われた東庭もあります。その庭などに見られる龍安寺垣は透かし部分の菱形が特徴の竹垣で、禅寺らしい閑寂な趣を際立たせています。

石だけで構成されたシンプルな意匠ながら、心の深奥に迫るような造形の妙をにじませている。

龍安寺庭園 りょうあんじていえん

枯山水/史跡/特別名勝
所在地:〒616-8001 京都市右京区龍安寺御陵下町13
電話:075・463・2216
http://www.ryoanji.jp/top.html

アクセス:京福電鉄北野線「龍安寺駅」下車徒歩7分
JR・近鉄京都駅前から市バス50系統「立命館大学前」下車徒歩7分
阪急大宮駅から市バス55系統「立命館大学前」下車徒歩7分
京阪三条駅から市バス59系統「龍安寺前」下車すぐ