雲海とは、雲を高いところから見下ろした時、その上面が海のように広がって見える状態をいいます。標高の高い山や峠道ではよく目にする光景ですが、さまざまな条件が重なると、さほど標高の高くない場所でも雲海は見ることができます。ここでは東京からも気軽に訪ねることができる関東地方の雲海スポットを紹介しましょう。
ひとくちに雲海と言ってもタイプはいろいろですが、ひとつ共通するのは、その発生時刻が夜明け前後の短い時間帯に限られることでしょう。太陽が高く昇り、気温が上がり、風が吹き始めると、雲海は跡形もなく消えてしまうのです。ときにはいつもより少しだけ早起きをして、空と大地が織りなす神秘的な風景を楽しんでみてはいかがでしょう。

雲海スポット《その1》 秩父ミューズパーク

埼玉県秩父市

雲海の季節:通年

雲海遭遇率:☆☆

※「雲海遭遇率」は雲海発生の大まかな目安です。雲海シーズンに週2~3回以上発生するなら☆☆☆、週に1~2回程度なら☆☆、月に1~2回程度なら☆で示してあります。

ミューズパークは秩父市が管理する面積約270ヘクタールの広大な公園。展望台や旅立ちの丘から雲海が眺められる。写真提供:秩父市

東京都心から最も近いと評判の雲海展望スポット。

都心からも気軽にアクセスできる雲海展望スポットとして、最近、注目を集めているのが秩父市です。周囲を山に囲まれ、盆地の中を荒川が流れる秩父市は、1年を通じて雲海が発生しやすく、なかでも春先や晩秋にはかなりの頻度で雲海と出会うことができます。そんな秩父市でも特におすすめのスポットが秩父ミューズパーク(入園無料)。市街地からクルマで20分ほどの高台にあり、武甲山をバックに盆地をすっぽりと覆いつくす見事な雲海を見ることができます。このほか郊外の美の山公園や三峯神社も格好の雲海展望スポットとなっています。

<アクセスガイド>
◎秩父市までは花園ICから国道140号で約35㎞。渋滞がなければ1時間弱で行ける。秩父市内から三峯神社までは約35㎞の道のり。
◎秩父鉄道秩父駅または西武秩父駅から秩父ミューズパーク循環バスで約20分。

雲海スポット《その2》 九十九谷展望公園

千葉県君津市

雲海の季節:秋~冬

雲海遭遇率:☆☆

 ※「雲海遭遇率」は雲海発生の大まかな目安です。雲海シーズンに週2~3回以上発生するなら☆☆☆、週に1~2回程度なら☆☆、月に1~2回程度なら☆で示してあります。

千葉県の眺望百景にも登録されている九十久谷の景観。初日のスポットとしても人気が高く、元旦には大勢の人々が集まる。写真提供:君津市

上総丘陵の九十九谷を埋める幻想的な雲海

高宕山を始めとする比較的標高の低い山々が、幾重にもひだを重ねるように連なる上総丘陵。その「九十九谷」とも呼ばれる山と谷の織りなす風景を一望にできるのが君津市鹿野山にある展望公園です。この上総丘陵では雨上がりの早朝などに濃い霧が発生することが多く、ときには房総半島の内陸部を覆いつくす大雲海となることも珍しくありません。ほかでは決して見ることのできない幻想的な風景を眺めることができ、雲海の有無には関係なく、初日の出を拝めるスポットとしても人気を集めています。

<アクセスガイド>
◎館山道・君津インターから県道93号などを走り約11㎞/25分の道のり。鹿野山牧場から延びる県道163号は、休日のみ一方通行の交通規制が実施されるので要注意。

雲海スポット《その3》 御前山(ごぜんやま)

茨城県常陸大宮市

雲海の季節:秋~冬

雲海遭遇率:☆☆

 ※「雲海遭遇率」は雲海発生の大まかな目安です。雲海シーズンに週2~3回以上発生するなら☆☆☆、週に1~2回程度なら☆☆、月に1~2回程度なら☆で示してあります。

三王山の頂上に立つ高さ18mの展望台からは、360度のパノラマを楽しむことができる。写真提供:常陸大宮市観光協会あ

那珂川沿いの景勝地に濃い川霧が立ちこめる。

常陸大宮市の御前山地区は、那珂川沿いにキャンプ場などが点在する自然豊かなエリアで、美しい水辺の風景から関東の嵐山とも呼ばれます。その那珂川では秋から冬にかけて、冷え込みの強い朝に川霧が発生し、見事な雲海風景となります。雲海の展望スポットとして人気が高いのは三王山自然公園の中、標高253mの山頂に建つ大展望塔。このほか、御前山青少年旅行村周辺のハイキングコースなどからも見ることができます。

<アクセスガイド>
◎常磐道・水戸北スマートICから那珂川沿いの国道123号を走って約20㎞/30分ほどの道のり。ETC非搭載車は水戸ICまたは那珂ICで降りる。

雲海スポット《その4》 竜神大吊橋(りゅうじんおおつりばし)

茨城県常陸太田市

雲海の季節:通年

雲海遭遇率:☆☆

※「雲海遭遇率」は雲海発生の大まかな目安です。雲海シーズンに週2~3回以上発生するなら☆☆☆、週に1~2回程度なら☆☆、月に1~2回程度なら☆で示してあります。

竜神大吊橋は有料の人道橋で、渡橋料金は大人310円。営業時間は8:30~17:00。休業日はないが、天候により制限がかかることもある。写真提供:常陸太田市観光物産協会

高さ100mの大吊橋から雲海を眼下にする。

茨城県北部の奥久慈県立自然公園にある竜神峡。そのダム湖にかけられた竜神大吊橋は、紅葉の名所、そして、国内屈指のバンジージャンプスポットとして知られ、急に冷え込んだ日の早朝などには、すばらしい雲海風景も眼下にできます。竣工当時、日本一のサイズを誇っていた歩行者専用の吊橋は、長さが375m、湖面からの高さが100mもあり、まるで空中散歩をしている気分で雲海を間近に楽しむことができます。

<アクセスガイド>
◎常磐道・那珂ICから国道349号や県道33号などを通って約31㎞/1時間弱。東北道・矢板ICからだと、国道293号や461号などを通って約70㎞/2時間の道のり。
◎JR常陸太田駅からバスで約40分。

雲海スポット《その5》 鎌倉山(かまくらやま)

栃木県茂木町

雲海の季節:10月下旬~12月

雲海遭遇率:☆☆

※「雲海遭遇率」は雲海発生の大まかな目安です。雲海シーズンに週2~3回以上発生するなら☆☆☆、週に1~2回程度なら☆☆、月に1~2回程度なら☆で示してあります。

鎌倉山は標高わずか216mの里山ながら、条件が揃うと壮大な雲海風景を目にできる。写真提供:茂木町

のどかな里山風景を包み込む一面の雲海。

那須岳を源流域として、栃木県東部と茨城県中央を横切って太平洋に注ぐ那珂川。その流域には豊かな里山の風景が広がり、なかでも鎌倉山山頂からの眺めは流域随一との評判もあります。その鎌倉山山麓で那珂川の川霧が大量に発生し、見事な雲海ができるのは10月下旬から12月にかけて。前日までの雨が上がり、放射冷却により地表付近の気温が急激に冷え込んだ早朝の時間帯などが雲海ウォッチングの狙い時になっています。

<アクセスガイド>
◎栃木県茂木町までは常磐道・水戸北スマートICから国道123号で約30㎞、北関東道・真岡ICから国道121号などで約27㎞、宇都宮市内からは約30㎞。いずれも所要時間は1時間ほど。