四季の巡りと暮らしの節目に、神に祈り、祭りを行う。人々の熱き心、ほとばしる想いの瞬間を、写真家・森井禎紹が切り取ります。今回は毎年6月に岩手県盛岡市で行われるチャグチャグ馬コです。

農耕馬に感謝する伝統行事

岩手県地方は、馬の名産地と知られ、江戸時代まで、軍馬や木場に使われ、その後農耕用として農民と深いつながりを持つようになり、家族同様として飼うようになりました。そこから馬と共生するための「南部曲り家」が生まれ、馬との深いつながりの中から愛馬精神が育まれ、馬の守り神である「蒼前神社」が信仰の中心になりました。

この「チャグチャグ馬コ」は農耕馬に感謝する200年以上に及ぶ伝統行事で、色鮮やかな装束で着飾った100頭程の馬と馬主が、蒼前神社で参拝し、盛岡八幡宮までの約13キロの道のりを約4時間かけて行進する祭りです。
昭和53年に文化庁から「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、平成8年には環境庁から「残したい日本の音風景100選」に「チャグチャグ馬コの鈴の音」が選定されました。

農民の素朴な愛馬と、華やかな大名行列風俗がミックスされた行事です。

「チャグチャグ馬コ」の由来は、「胸がい」や「尻がい」(鞍がずれないための道具)

にたくさんの小鈴がつけられ、歩く度に「チャグチャグ」と美しい音色を立てることから生まれました。

蒼前神社に集まる馬達は100頭以上にもなります。

蒼前神社を午前9時30分に出発し一行は、岩手山を背に行道、午後1時30分ごろ盛岡八幡宮に到着します。

チャグチャグ馬コ

開催日:6月15日
開催地:岩手県盛岡市滝沢村蒼前神社
問い合わせ:滝沢村観光協会 Tel::019-684-2111
http://www.city.takizawa.iwate.jp/kanko_kyoukai

写真: 森井 禎紹 Teiji Morii

写真家。1941年生まれ。兵庫県三田市出身。1964年頃より趣味で写真を始める。写真コンテスト、カメラ雑誌月例コンテストに応募、入選回数362回を数える。1990年プロに転向、ライフワークとして日本全国の祭りを取材。『祭りに乾杯』『祭り旅』『祭り日』他多くの写真集を出版。現在、社団法人写真家協会(JPS)会員、一般社団法人二科会写真部常任理事、兵庫県写真作家協会最高顧問など。