どこでも手に入る身近な花を、手持ちのグラスやマグカップ、お皿などを使って手軽に生けてみませんか?花道家・大久保有加さんが贈る、ハッピーでポジティブな花のある暮らしのエッセイといけばなレッスン。
今回の花材はガーベラです。
生け花作成・文 : 大久保有加 Yuka Okubo / 写真 : 新美 勝 Masaru Niimi
キッチンを華やかに、ガーベラのアレンジ。
すっと伸びた茎の先に色鮮やかな花弁が印象的なガーベラ。一重咲き、八重咲きのほか、細長く尖った花びらが幾重にも重なったスパイダー咲きなど多くの品種があるうえ、大きさも色の種類もさまざま。1年中流通していて冬も楽しめますが今が最盛期、いちばん種類が豊富です。
ガーベラは南アフリカ原産の多年草。春は最盛期で花色も種類も豊富。
女性が魅了されるオトコ×花の関係
生け花は、もともと男性のたしなむものでした。女性の手習いとなったのは、江戸の後期から。
一家の主が床の間におもてなしの花を生けて客人をもてなす。生ける植物の表情を見極めて、美しいと思った箇所を際立たせるために、その他のところは鋏をいれて削ぎ落とし、より伝えたい美を引き出していく。
花を生けることは、植物とのコミュニケーション。このやりとりから、直感力、決断力、実行力が養われていくのです。ビジネススキルにも繋がり、かつて武士のたしなみだったのも納得。
集中することで無心になり、植物と向かい合うことで、自分自身のリズムや呼吸が整っていくことが生け花の魅力でもあります。
男性の花を愛でる姿は何とも魅惑的。生け姿もとても美しいのです。私は「 花を愛でる」 という言葉は、もともとは男性の花に対しての眼差しの表現ではないかと思っています。男性の花を愛おしむ眼差しには、女性が花を見つめる愛情とは違う、艶のある美しさを秘めている気がしてなりません。
日本語では、たとえ枝物や葉だけを生けても「花を生ける」「花が生けてある」と表現します。日本の言葉遣いからは、植物と人が共に生活している様子がみてとれます。生活に根ざした花文化がそこにあるのです。
植物たちの命の輝きを「花」と呼ぶ。そうした感覚を共有できる日本の生活文化を失いたくないものです。