ピアノ語り : 水城雄 Yu Mizuki / 絵 : 朝生 ゆりこ Yuriko Aso / 文 : 中島有里子 Yuriko Nakajima
穀雨 こくう
子どものころは不思議でしかたがなかった。冷たい雨が降ったり、天候が下り坂になると、大人たちはこめかみを押さえ、しかめつらして名残惜しげにストーブのまわりに集まってくる。片付けてしまわなくてよかったといいながら、シューシューと湯気を立てるやかんを脇にずらしてかき餅を焼いたりする。畑に出るのが一日遅れて、それがうれしそうだ。
大人とはややこしくめんどくさいものなのだなと思いながら、早く雨があがって日が出て、ひばりの巣を河原にさがしに出かけるのを心待ちにしていた。
いまはめぐみの雨というにはいささか激しい風雨が、まだやわらかな梅のちぢれた若葉を吹きとばさんばかりにしている。(水城ゆう)
春季の最後の節気。この時期に降る雨は百穀を潤し発芽を即す雨の意「百穀春雨」といわれ、この恵みの雨で潤った田畑は種蒔きの好機を迎えます。川辺の葦が芽吹き、霜が降りることもなくなり、牡丹の花が咲く麗しい季節。吹く風は時に初夏を思わせ、穀雨が終わる頃、八十八夜を迎えます。
七十二候 穀雨初候・4月20日 葭 始 生 あし はじめてしょうず
七十二候 穀雨次候・4月25日 霜止出苗 しもやみて なえいず
七十二候 穀雨末候・4月30日 牡 丹 華 ぼたん はなさく
リキュウバイ
バラ科ヤナギザクラ属の落葉低木。清楚な花が茶人に好まれ、千利休の命日の頃に咲くことから「利休梅」の名が付いたといわれている。