日本列島は南北に長いため、気候区分は亜熱帯から亜寒帯までと幅広い上、海岸線から高山帯までと地形の変化も複雑で、さまざまな環境に適応して暮らしている野鳥の種類も600種前後ととても多くなっています。そんな野鳥たちの暮らしぶりを、たまに小動物もおりまぜながらご紹介します。(和田剛一)

フレンドリーな性格

同じ種でも、個々の鳥で性格の違いもあるが、種族特性としての性格もある。ヤマガラとシジュウカラは、同じシジュウカラ科で、大きさも住んでいる場所も同じようだけど、性格は正反対で、シジュウカラは警戒心が強く、人間には気を許さない性格なのにたいして、ヤマガラはあっけらかんとして人懐っこい。巣箱と餌台を用意してやると、両種とも利用するのだけど、ヤマガラは一年中やってきては餌をねだったりする。やがては、餌台に餌がなくなっていたりすると、窓をくちばしてたたいて催促するようになったりと図々しいところもみせる。

我が家の巣箱から巣立ったばかりのヒナ、まだ頭に産毛をのせている。

餌台にヒマワリの実を入れておいてやると、一家で遊びにきてくれる。

毒入りの実が大好き!?

ヤマガラは、エゴノキの実やシキビの実が大好物。これらは人間が誤食すると命に関わるほど毒性が強いのに、平気で食べるというのは、どういう仕組みになっているのだろう、不思議なことだ。エゴノキの実を持っていくヤマガラを観察していると、一瞬でもぎ取るのもいれば、いつまでもぶら下がって、なかなかとれない個体もいる。頭のいいのや、経験豊かな奴は、どこにくちばしを当てればいいか、よくわかっているようだ。

エゴノキの実を取ろうと悪戦苦闘中、要領が悪いとなかなか取れない。

芸達者な愛嬌者

ヤマガラは、頭が良く器用なため、半世紀ほど昔には芸を仕込んでおみくじ引きなどを大道芸としてやらせていた。ミニチュアのお宮や賽銭箱、鈴などをセットして、客から小銭をもらうと、賽銭箱に入れ、鈴を鳴らし、お宮の扉をあけておみくじを持って帰るのだ。別に縛っているわけでもないのに、逃げて行ったりはしない(たまに、なにかに驚いて逃げることもあったらしい)。こんな光景を実際に見たのも、わたしなどの世代が最後になってしまった。いまは野鳥を飼うことは禁じられている。

我が家の餌台には、10羽ほどのヤマガラが年中やってきている。そこで、「つるべ上げ」の芸をやらせてみた。昔のヤマガラ専用の鳥カゴには、つるべ上げ用の出窓が付いていたものだ。しかし、野外で自由だと、直接つるべに止まったりして、なかなかたくし上げたりはしない。くちばしで吊るしてある紐をたくし上げ、足で抑えて落ちるのを防ぐという動作を繰り返すのだけど、そんな面倒なことをやるのは、10羽のうち1、2羽だった。

つるべに入れてあるヒマワリの実を取ろうと、くちばしと足を使ってつるべを上げる。

野鳥の不思議な能力

野鳥たちは、体温を保ったり、飛ぶために大切な羽毛や翼などの手入れを怠らない。水浴や砂浴といったものから、蟻浴とか煙浴などの特殊な方法をとることもある。このうち、蟻浴は、蟻の巣や行列の上で翼を広げ、怒ったアリがよじ登ってきて噛み付くのを利用して、寄生虫対策とする方法が一般的だ。わたしが目撃したのは、アリをくちばしでくわえ、これを全身になすりつけるというやりかたをしていた。野鳥を観察していて時々思うことだが、アリの蟻酸を利用して羽毛のメンテをやるなんてことを、どうやって身につけてきたのだろうか。

アリを捕らえる瞬間。食べるのではなく、蟻浴に利用する。

アリをくわえ、全身の羽毛になすりつけているヤマガラ。