日本在住のフランス人、ブノアさんが、独特の視点で日本を捉えたビデオレポートです。
今回は,富山県・立山黒部アルペンルート「雪の大谷」をレポートします。

マリオサーキットの世界

富山県での撮影、一番の目当てはここ、立山黒部アルペンルートの雪の大谷だった。念願の場所にカメラマンと二人で立った瞬間、二人の頭に浮かんだのは「マリオカート」。立山黒部アルペンルートに触発されたであろうマリオサーキットの世界が、現実に目の前に広がっていたのである。

わたしは多くのフランス人と同じように、子供の頃から日本の漫画やアニメ、ビデオゲームのシャワーを浴びながら育ってきた。日本において、こうした現実とフィクションの比較をする機会が度々あるが、一度として失望したことはない。どの景色も期待を裏切ることがないのである。

そしてこの雪の大谷はいつも以上に私の目を惹きつけた。巨大な雪の壁の迫力を全身で感じることができ、とても幸運であった。(テブニ・ブノア)

立山黒部アルペンルート 雪の大谷

巨大な雪壁間に開かれた期間限定の異空間、雪の大谷ウォーク立山黒部アルペンルート、車窓に見えるのは、どこまで行っても雪の壁ばかり。

延々と続くその雪の谷間を高原バスがひた走ることおよそ1時間弱、乗客はひたすら冷え冷えと積もった雪の断面ばかり目にすることを余儀なくされます。それでも退屈したり、せっかくの視界を妨げている雪を不満に思う人はだれ一人いません。むしろ単調ではありますが、広大な自然の中に刻まれた日常ではありえない雪景色にただただ圧倒され、目を見張り、驚嘆する人ばかりでしょう。

立山黒部アルペンルートは富山市と長野県大町市を結ぶ山岳観光路線で、延長約86㎞、ケーブルカーやロープウエイ、トロリーバスなどを乗り継ぎながら高原と二つの山脈、その間に刻まれた黒部峡谷を横断します。コース中のハイライトはこの雪の大谷が出現する富山県側の標高977mの美女平~2450mの室堂平間23㎞に及ぶ高原の道で、室堂平の外れでは今なお地獄谷が盛んに水蒸気や亜硫酸ガスを吹き出し火山活動の驚異を伝えています。

ここは日本でも有数の豪雪地帯で、大陸から冬を運んでくる偏西風が日本海の湿った空気をたっぷり吸い上げて大量の雪を降らせます。冬の間、晴れ間はほとんどなく、来る日も来る日も雪に見舞われ山も里も深々と埋もれてしまいます。

この地に降る雪は湿り気をおびて粘着力が強く、降り積もるにつれどんどん収縮して重く強固なしまり雪になります。 高原道路の除雪が始まるのは2月以降で、今ではGPSで雪に埋もれた道路面を確認しながらひと月ほどを要して進められます。アルペンルートの開通はゴールデンウイーク前で、室堂バスターミナル以西の500mほどが「立山・天空ロード」として開放され、自由に歩き回れるようになります。

この辺りは吹溜まりになりますのでもっとも雪の堆積が多く、雪壁の高さは15~20mにもなります。5月も半ば以降になると、気温の上昇により急ピッチで雪解けが進みますので、見頃は5月いっぱいか遅い年でも6月中旬まででしょう。(藤沼裕司)

*立山黒部アルペンルート・オフィシャルガイド

https://www.alpen-route.com/index.php

Video Footage: テブニ・ブノア Theveny-Benoit

2003年、留学先のカナダで日本文化に出会い、日本に興味を持ち来日。来日後は日本に魅了され、日本の伝統文化、ポップカルチャーを世界に発信すべくブログを立ち上げ、現在はYouTubeを中心にありのままの日本を独自の視点で発信し続けている。現在は Ici Japon 株式会社を設立し、日本のお菓子のオンラインショップ、日本の姿を伝えるYouTube、Made in Japanのアパレル販売など、様々な角度から日本の魅力を世界に広めている。プライベートでは、日本人女性と結婚し、3児の父として奮闘している。

文: 藤沼 裕司 Yuji Fujinuma

フリー編集者、記者。動植物、自然、歴史文化を主なテーマに活動。