太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。
ピアノ語り : 水城雄 Yu Mizuki / 絵 : 朝生 ゆりこ Yuriko Aso / 文 : 中島有里子 Yuriko Nakajima
春分 しゅんぶん
九頭竜川は越前の国奥越地方に源流を持ち、三国湊で日本海へと流れこむ一級河川だ。「九つの頭を持つ竜」などといかにも勇ましい名前を持っているが、「くずれがわ」すなわち「崩川」の音に漢字を当てたともいわれている、過去はしばしば氾濫を起こした暴れ川だ。
その中流域の、川が作った河岸段丘の盆地に、私は生まれ育った。
四方を険峻な山波に囲まれ、空気の澄んだ日にははるかに白山山系を望むことができる。
山嶺のせいで日の出は遅く、日の入は早い。春分といえどもまだまだ日は短く、夜は長いと感じる残雪の季節であるのが子どものころの印象だが、いまはすっかり顔つきが変わってしまった。(水城ゆう)
七十二候 春分初候・3月21日 雀 始 巣 すずめ はじめてすくう
七十二候 春分次候・3月26日 桜 始 開 さくら はじめてひらく
七十二候 春分末候・3月31日 雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす
コヒガンザクラ
桜の品種の一つ。エドヒガンとマメザクラの交雑種といわれる。雪を頂いた南アルプスを背景に、淡い紅色の可憐な花が一帯を染める長野県伊那市高遠城址の群生が有名だ。