太陰暦の時代、春夏秋冬それぞれを6つに分けて24等分し、その区切りと区切られた期間の季節を表すために作られた二十四節気。七十二候はそれをさらに3つの項に細分して1年の移ろいを表したものです。些細な兆しからいつしか劇的な変化を遂げていく日本の四季の表情を、水城 ゆうがピアノで表現します。

春分 しゅんぶん

九頭竜川は越前の国奥越地方に源流を持ち、三国湊で日本海へと流れこむ一級河川だ。「九つの頭を持つ竜」などといかにも勇ましい名前を持っているが、「くずれがわ」すなわち「崩川」の音に漢字を当てたともいわれている、過去はしばしば氾濫を起こした暴れ川だ。

その中流域の、川が作った河岸段丘の盆地に、私は生まれ育った。

四方を険峻な山波に囲まれ、空気の澄んだ日にははるかに白山山系を望むことができる。

山嶺のせいで日の出は遅く、日の入は早い。春分といえどもまだまだ日は短く、夜は長いと感じる残雪の季節であるのが子どものころの印象だが、いまはすっかり顔つきが変わってしまった。(水城ゆう)


七十二候 春分初候・3月21日 雀 始 巣 すずめ はじめてすくう

七十二候 春分次候・3月26日 桜 始 開 さくら はじめてひらく

七十二候 春分末候・3月31日 雷乃発声 かみなりすなわちこえをはっす

コヒガンザクラ

桜の品種の一つ。エドヒガンとマメザクラの交雑種といわれる。雪を頂いた南アルプスを背景に、淡い紅色の可憐な花が一帯を染める長野県伊那市高遠城址の群生が有名だ。

ピアノ語り: 水城雄 Yu Mizuki

1957年、福井県生まれ。東京都国立市在住。作家、ピアニスト。音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。

絵: 朝生 ゆりこ Yuriko Aso

イラストレーター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部油画科卒。雑誌、書籍のイラスト、挿画などを多く手がける。 https://y-aso.amebaownd.com

文: 中島有里子 Yuriko Nakajima

一般社団法人めぐりジャパン 代表理事。