四国八十八箇所霊場が開創1200年を迎えた遍路の道。
時を超え、年代・人種を超えて、現代も人々の思いに寄り添う遍路道には、
この地独特の「お接待文化」が根付いています。

 

いつの時代でもどんな人でも受け入れる遍路

死に装束を意味する白装束、死に顔を隠す菅笠、墓標にするための金剛杖など、今も残る巡礼の出で立ち。 「同行二人」のお遍路さんは、道中弘法大師が見守るなかで自己と向き合い、それぞれの悩みを見据えます。
お遍路は願いごとを叶えるため、病を治すため、供養のため……、理由は人それぞれ。時代を超えて人々を惹きつけるお遍路には、巡礼によってご利益を受けるだけではなく、自ら困難に立ち向かい、自分の人生の答を見つけるという意味も隠されているのではないでしょうか。
最近では徒歩で巡る歩き遍路に加え、バスツアーや自転車など、多様な方法でお遍路が行われています。札所を番号順に回る「順打ち」や、逆順に回る「逆打ち」、また何回かに分けて行う「区切り打ち」などスタイルはさまざま。お遍路は時代に合わせて柔軟にその形を変化させ、外国人や若者など多くの人々を受け入れ続けています。

お接待文化に見えるおもてなしの心

人々がお遍路に魅了される理由のひとつが、現地で受ける温かい「お接待」。 さて、そのお接待とは、どんなことが行われるのでしょう?
お接待とは地元の方がお遍路さんに茶菓や食事などをふるまったり、宿を提供したりする独特の風習のこと。四国の人にとって、お遍路さんはお大師様であり仏様でもあるといいます。また、お接待には「自分の分までよろしくお参りください」との意味も込められています。
昔から、四国ではお遍路さんをもてなすのは当たり前のこと。地元の方は「なにかを意識して行っている訳ではない」と口をそろえて話されます。外国人が驚いたり感動したりする理由の一つに、このお接待による四国各地での人と人との温かい触れあいがあるからでしょう。
遍路道を歩けば、あらゆる場所でお遍路さんをもてなす笑顔を見ることができます。その一部をご紹介します。

門前一番街

第一番札所霊山寺のすぐ横にある、お遍路用品一式がそろう門前一番街。早朝から巡拝を始めるお遍路さんをもてなすため、朝は7時に開店します。お接待コーナーでは阿波番茶をふるまい、外国人遍路客への応対も積極的に行っています。

鳴門金時などの四国土産も購入できるほか、軽食をとることもできる。

一番さんの縁どころ ばんどう街角ギャラリー

明治期に建てられた印刷所の作業場を、まちの活性化を図って地元の住民グループ「ばんどう門前通り協議会」が2009年に接待所へと改装。第一番札所霊山寺の近くで、地元の方がボランティアでお接待を行っています。レトロな木造の建物は築100年、登録有形文化財にも指定されていて、映画「バルトの楽園」でロケにも使用されました。

徳島県鳴門市大麻町坂東字北条86

英語で書かれたウェルカムボード。外国人遍路客に対応するため、壁には英語の発音が書かれた張り紙が。
この部屋がお遍路さんでいっぱいになることもあるという。

柳水庵ボランティアグループ

第十一番札所藤井寺と第十二番札所焼山寺を結ぶ焼山寺道(しょうさんじみち)は焼山寺越えとも呼ばれ、「へんろころがし」と呼ばれる急峻な上り下りが続く、順打ちの歩き遍路が最初に体験する難所。その山道の柳水庵でお接待をする女性グループがいます。10名ほどのメンバーが交代で接待小屋の管理を行い、電気代などの維持費はワラビを売るなどして集めるそう。有名人から外国人まで、思わぬ出会いの連続が楽しいと笑顔で話してくれました。

徳島県名西郡神山町阿野松尾790

2人のお遍路さんは兄弟でそれぞれ高知と熊本からやって来た。
お遍路さんとの会話が楽しいと語るボランティアグループのみなさん。地元でとれたサツマイモなどのお接待。

第十二番札所 摩廬山 正寿院 焼山寺

四国霊場で2番目に高い山岳札所である焼山寺。四国山脈の山々が広がる境内からの眺望は見事。第十一番札所藤井寺から続く「へんろころがし」と呼ばれる難所を乗り越えたお遍路さんを優しくもてなしてくれます。宿坊では地元の食材を使った住職の奥さん手作りの料理に心安らぎます(1泊2食付・要予約)。

徳島県名西郡神山町下分字中318

境内ではお茶のお接待も行っている。
ご利益を求め、多くの人が訪れる。副住職の笠井真幸さん。

鴨の湯いやしの舎

第十一番札所藤井寺の近くで、2002年に吉野川市農業振興課長の岡田晋さんの声掛けのもと、地元の方の協力を得て建設されました。宿泊は無料で先着順、女性専用の小屋も増設され、コインランドリーもあります。鴨島温泉「鴨の湯」の敷地にあり、歩き遍路には、入浴料がお接待で割引になります。

徳島県吉野川市鴨島町飯尾451-1

岡田晋さん(左)と鴨島温泉代表取締役の堀北孝二さん
露天風呂から翌日登る遍路道の山々が見える。