四季の巡りと暮らしの節目に、神に祈り、祭りを行う。
人々の熱き心、ほとばしる想いの瞬間を、写真家・森井禎紹が切り取ります。
今回は、毎年3月、滋賀県近江八幡市で行われる左義長祭です。

湖国に春を告げる風物詩

左義長は、藁(わら)を1束ごとに揃えた約3mの三角錐の「ダシ」を胴体とし、その上に数mの青竹に赤紙を中心として、いろいろな飾り物が付けられる。このダシに棒を通し、つり縄で括り固め、御輿のごとく担げるように作り上げ、これに松明がつけられて完成となる。この全体を左義長と呼ぶ。

その飾りは、主に穀物や海産物を使ったもので、その中心には、毎年の干支にちなんだ造形物が付けられる。

制作期間は約2ヵ月、費用を惜しまず、手間ひまかけて丁寧に作られた左義長はまさに芸術品の域に達している。

また天下の奇祭と呼ぶにふさわしく、男性が化粧して女性に扮し、左義長を勇壮に担ぎ踊る。その華やかさと、左義長同士が激しくぶつかり合う様は観る者を圧倒し、魅了する。

これが、2日間に渡って日牟禮八幡宮一帯で繰り広げられるが、クライマックスは2日目の午後20時頃、左義長5基に一斉に明かりが点され(奉火)、この奉火が燃え盛る左義長の回りでは、女装した若者が乱舞する。その様子は迫力満点、祭はクライマックスを迎える。

また、歴史的には、織田信長が安土城で毎年盛大に繰り広げ、自ら異粧華美な姿で踊り出たと[信長公記]に記されており、400年にも渡る長き歴史を誇る祭でもある。

近江八幡市は、近江商人の商家や町並み、そして白い土蔵や石垣が並び、八幡堀がある水郷地帯、この祭は、湖国に春を告げる風物詩でもある。

左義長まつり

開催日:毎年3月中旬 

開催地:日牟禮八幡宮 滋賀県近江八幡市宮内町257

アクセス:

《公共交通機関》JR琵琶湖線 「近江八幡」 下車 バス 7分 大杉町

《車》名神竜王ICから30分 観光駐車場(小幡・多賀)の2カ所あり

問い合わせ:近江八幡駅北口観光案内所 TEL : 0748–33-6061

https://www.biwako-visitors.jp/event/detail/25080

写真・文: 森井 禎紹 Teiji Morii

写真家。1941年生まれ。兵庫県三田市出身。1964年頃より趣味で写真を始める。写真コンテスト、カメラ雑誌月例コンテストに応募、入選回数362回を数える。1990年プロに転向、ライフワークとして日本全国の祭りを取材。『祭りに乾杯』『祭り旅』『祭り日』他多くの写真集を出版。現在、社団法人写真家協会(JPS)会員、一般社団法人二科会写真部常任理事、兵庫県写真作家協会最高顧問など。