日本各地の花のシーンを切り取る写真家、山口高志がピックアップするニッポンの桜風景です。福井県若狭町三方五湖/岡山県総社市/奈良県奈良市若草山/青森県弘前市弘前城址

海辺に咲く

撮影地:福井県若狭町三方五湖レインボーラインより(4月上旬

ヤマザクラの前方に開けるのは若狭湾。桜の上方には敦賀半島が覗く。桜の後方には穏やかな佇まいの三方五湖が広がる。雪の多い北陸若狭に位置するが対馬海流(暖流)の影響を受けるためか、開花時期は早く、例年4月上旬見頃となる。

山に咲く

撮影地:岡山県総社市(4月上旬)

山腹斜面のほとんどが開花期を迎えるとヤマザクラで彩られる。現在の日本では桜と言えばソメイヨシノが主流である。が、古来より桜と言えばこの山桜の事を指した。葉の開出とともに花を咲かせる。落ち着きと優雅な佇まいが魅力。秋の紅葉で知られる豪渓近くの山を彩る。見頃は例年4月上旬。

古都に咲く

撮影地:奈良県奈良市若草山(4月上旬)

古都奈良の街の後背に壁のように連なる若草山の1段目の芝原から桜越しに春霞に煙る東大寺大仏殿を望む。おぼろとした情景は如何にも古都に春の訪れを告げるようである。

城跡に咲く

撮影地:青森県弘前市弘前城址(4月下旬)

城と桜の所縁りは深く日本各地に名所が連なるが、その筆頭に弘前城址を上げることに先ず異論は出まい。堀を囲う和の多さ、古格の佇まいは格別の風情がある。薄暮の時刻に浮かぶ夕桜は美しく妖しげである。

写真: 山口高志 Takashi Yamaguchi

写真家、故入江泰吉氏の撮影助手を務めた後、1974年からフリーランスの写真家となる。日本国内の自然、国立公園などを主なテーマに、精力的な活動をおこなっている。主な写真集・著書は、『Somewhere-どこか』『不思議の国のアリス』『モネの風景紀行』『風景写真の上達』『心の四季彩』『風景の完成』『山よ、海よ...』『完璧な構図決定』『風景撮影の要点』『日本の国立公園』『フレーミング実例事典』『究極の絶景・日本の国立公園』『つきづきの彩り』『上手な写真の狙い方』など。