四季の巡りと暮らしの節目に、神に祈り、祭りを行う。人々の熱き心、ほとばしる想いの瞬間を、写真家・森井禎紹が切り取ります。今回は毎年11月に山口県下松市で行われる稲穂祭です。

「きつねの嫁入り」で知られる稲穂祭りは、ユニークな祭りです。

享保9年のある夜、住職の夢枕に白狐の老夫婦が立ち、「私たちはツムラガ森」で往生した白狐です。私たちを人様と同様に亡骸を葬り、畜生道から解脱できるように願いをかなえてくださるなら、私たちの法力をもって「和尚さんの失われた数珠を手元にもってきて、寺や里人もお守りしましょう」と言って消えました。

住職が目を覚ますと、枕元に数珠があり、早速、寺男と共に告げられた場所に行くと二匹の白狐が大往生していた。その二匹を、墓も建て戒名も付けて手厚く葬った、という言い伝えがあります。

昭和25年秋に、第1回稲穂祭りが開催され、その催しの一つとして「狐の嫁入り」が誕生しました。主役は白狐の新郎新婦で仲良く並んで人力車に揺られ、後に紋付き袴の親族やお供が続く。

稲穂祭

開催日:毎年11月2、3日(本祭)
開催地:山口県下松市花岡福徳稲荷神社
問い合わせ:福徳稲荷神社 TEL:0833-43-4500

写真・文: 森井 禎紹 Teiji Morii

写真家。1941年生まれ。兵庫県三田市出身。1964年頃より趣味で写真を始める。写真コンテスト、カメラ雑誌月例コンテストに応募、入選回数362回を数える。1990年プロに転向、ライフワークとして日本全国の祭りを取材。『祭りに乾杯』『祭り旅』『祭り日』他多くの写真集を出版。現在、社団法人写真家協会(JPS)会員、一般社団法人二科会写真部常任理事、兵庫県写真作家協会最高顧問など。