あわただしい日常は忘れて、ゆったりした時の流れに身をゆだねてみたい。そう思う人にお勧めしたいのが旧街道を巡る旅。初めてなのに、なぜか懐かしい。ちょっと不思議な気分も味わえるはずです。今回は西日本編です。
文 : 佐々木 節 Takashi Sasaki / 写真 : 平島 格 Kaku Hirashima / 写真協力 : 徳島県観光協会
Keyword : 周山街道・かやぶきの里 / 奈良街道・暗越 / 吹屋街道・吹屋ふるさと村 / 撫養街道・脇町 / 日田往還・狭霧台
周山街道・かやぶきの里
(しゅうざんかいどう・かやぶきのさと) 京都府南丹市美山町安掛
北山杉に囲まれた茅葺き集落
京の都と若狭湾とを結ぶ周山街道(国道162号)は、古くから海産物の流通路として発展してきた道。京へサバを運んだ鯖街道といえば琵琶湖西側の若狭路(国道367号)が有名ですが、広い意味では、この周山街道もまた鯖街道のひとつなのです。
その周山街道のほぼ中間にあるのが美山町(現:京都府南丹市)のかやぶきの里。戸数50ほどの小さな集落ですが、今も38戸の茅葺き建物が残っています。
<アクセスガイド>京都市街から国道162号などで約45km
JR京都駅、園部駅から路線バス(要・乗り継ぎ)
南丹市美山観光まちづくり協会 ☎0771・75・1906
https://miyamanavi.com
奈良街道・暗越
(ならかいどう・くらがりごえ) 奈良県生駒市
奈良と難波を最短距離で結ぶ
遣隋使や遣唐使が船出した難波津と平城京を最短距離で結んでいたのが奈良街道・暗越です。道の歴史は相当に古く、天平勝宝4年(西暦752年)には、かの鑑真和尚が通った記録も残っています。
現在は国道3 0 8号がその道筋をほぼ忠実にトレースしていますが、生駒山地をまっすぐに横切る道だけに、勾配のきつさと道幅の狭さはかなりのもの。江戸時代に敷かれた石畳の区間も残っています。
<アクセスガイド>第二阪奈道・小瀬ICから約5km
近鉄奈良線・枚岡駅、近鉄生駒線・南生駒駅から徒歩1時間強
生駒市産業振興課 ☎0743・74・1111
吹屋街道・吹屋ふるさと村
(ふきやかいどう・ふきやふるさとむら) 岡山県高梁市成羽町吹屋838-2
ベンガラに彩られた町並み
備中松山城の城下町として知られる高梁(たかはし)市。その西の山中にひっそりとたたずむ吹屋の町は古くから銅山で栄え、江戸時代の末期から明治にかけては良質な赤色顔料ベンガラ(酸化第二鉄)を産したことでさらに発展しました。街道沿いには、格子や土壁にベンガラを贅沢に使った重厚な造りの商家が立ち並び、赤褐色の石州瓦とともに町全体を鮮やかな赤に染め上げています。
中国道・新見ICから約20km
伯備線・備中高梁駅から路線バスで55分
成羽町観光協会吹屋支部 ☎0866・29・2222
https://www.okayama-kanko.jp/spot/10876
撫養街道・脇町
(むやかいどう・わきまち) 徳島県美馬市
藍が立ち上げた立派なうだつ
古く奈良時代から四国の玄関口として栄えてきた撫養の港(現:鳴門市)。そこから吉野川の北岸を西に向かって延びているのが撫養街道です。このあたり一帯は江戸時代中期以降、藍の生産で栄え、「阿波25万石、藍50万石」とも言われるほどでした。
脇町(現:美馬市)も藍の集積地として栄えた町で、その中心街には立派な“うだつ”を立ち上げた家々が富を競い合うように建ち並んでいます。
<アクセスガイド>徳島道・脇町ICから国道193号で約4km
徳島線・穴吹駅からタクシーで約10分
美馬市観光協会 ☎0883・53・8599
https://www.city.mima.lg.jp/kanko/
日田往還・狭霧台
(ひたおうかん・さぎりだい) 大分県由布市湯布院町川上1946
日田はかつて天領(幕府直轄領)として栄え、『九州の京都』とも謳われた町。筑前、筑後、肥前、豊後と接する要衝の地だったため、街道網が四方八方に延び、それらは日田往還と呼ばれていました。そのひとつ、別府へと延びる道( 現在の県道1 1号)沿いには美しい風景と魅力的な温泉地が数多く点在。狭霧台周辺からは湯布の町を眼下にしながら、秀峰・由布岳を仰ぎ見ることができます。
<アクセスガイド>大分道・別府ICから約14km
九大本線・由布院駅からタクシーで約5分
由布院温泉観光協会 info@yufuin.gr.jp
http://www.yufuin.gr.jp/
➡️一度は見ておきたい旧街道の風景 東日本編