お茶は 同じ木の葉を用いながらも 、製造法の違いによりそれぞれ風味や 味わいは異なったものになります。ここでは、それぞれの茶について解説します。

不発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶

茶の葉に含まれる酸化酵素 の処理の仕方により不発酵茶、半発酵茶、発酵茶と、加熱処理後の菌類発酵による後発酵(こうはっこう)茶に大別されます。

不発酵茶は茶葉を蒸す、炒る、煮 るなどして酸化酵素の働きを抑え る、つまり発酵させないで製造する茶で、一般に緑茶といいます。日本の緑茶はほとんど蒸気で熱する蒸しちゃが蒸し製、中国で は釜で炒る釜炒り製ですが、日本で も九州の一部で釜炒りが行われてい ます。

半発酵茶は酸化酵素の働きをある 程度利用した製造法で、烏龍茶がよ く知られています。発酵茶は酸化酵 素の働きを最大限に利用し、完全に 発酵させて製造するものでこれが紅 茶です。後発酵茶の代表的なものは中国のプーアル茶で、その他東南ア ジアの茶葉自体を食べる〝食べるお 茶〞もこれに含まれます。

日本茶のほとんどは蒸気で熱する 蒸し製ですが、この製造法は日本に 特有のもので、これによりそれぞれ の旨みや香りが醸成され味わいを深 めています。

煎茶

日本茶消費量の8割を占める代表種で、産地や収穫期により味わいは異なります。5月の八十八夜前後に やわらかい新芽だけを摘んだ一番茶を「新茶」といい、それ以降遅摘みになるほど等級が下がります。通常より蒸し時間を長くして渋みを抑えた製品が「深蒸し煎茶」です。

玉露

極上品として扱われ、被覆材で太陽光を遮る「覆下栽培(おおしたさいばい)」で育てられた新芽からつくられます。艶があって緑濃く、細くよじれた茶葉が良質とされます。

かぶせ茶

茶葉の栽培は玉露より簡易な被覆法、短い遮光期間で行われ、渋みが 抑えられ甘みのやや優る味わいが特 徴です。

蒸し製玉緑茶(むしせいたまりょくちゃ)

製造の最終工程が異なるため勾玉状(まがたまじょう)に仕上がるのが特徴で「ダリ茶」ともいわれます。佐賀県や熊本県で生産されています。

抹茶

玉露と同じく「覆下栽培」でつくられた「てん茶」を原料に、石臼で挽いて 粉末状にした茶です。江戸期に煎茶 の製法が確立するまではこの抹茶が 主流で、茶道の世界と深く関わってきました。

番茶

「番外茶」からきているといわれ、 一番茶の若芽の後や夏以降に収穫し た三番茶、四番茶、また煎茶の製造 過程で除かれた硬い葉や茎でつくら れます。原型をとどめたままの茶葉 を煮出して飲む京番茶もあります。

ほうじ茶

煎茶や番茶を強火で炒って独特の 香りをつけた茶です。家庭でもフラ イパンなどで炒るだけでできます。

釜炒り製玉緑茶

中国緑茶と同じ製法で、釜で茶の 葉を炒り乾燥させて勾玉状に仕上げ ます。蒸し製よりも香りが豊かで、 九州地方でよく飲まれています。

漬物茶

後発酵茶の一つで、茶葉を桶など で貯蔵し、乳酸菌や酢酸菌で発酵さ せて漬物のように仕上げます。日本 には徳島県の阿波番茶や、高知県に 伝わる古典的な碁石茶などがありま す。

■参考資料
(社)日本茶業中央会監修『緑茶の事典』柴田書店、2000
松下智『日本の食文体系20、茶博物誌』東京書房社、1983
出典:主婦の友社編『決定版お茶大図鑑』2012