日本列島は南北に長いため、気候区分は亜熱帯から亜寒帯までと幅広い上、海岸線から高山帯までと地形の変化も複雑で、さまざまな環境に適応して暮らしている野鳥の種類も600種前後ととても多くなっています。そんな野鳥たちの暮らしぶりを、たまに小動物もおりまぜながらご紹介します。(和田剛一)

名前をめぐるいきさつ

鳥にはあずかり知らぬことではあるし、ほぼすべての鳥のガイド本などには書かれている有名な話ではあるけれど、仏教の三宝(仏、法、僧)を名前としているいきさつを簡単に紹介しておきましょう。

深山幽谷の霊山と呼ばれるような場所では、毎年5月の夜になるとブッ・ポウ・ソウと聞こえる鳴き声がし始める。時を同じくして、ハトほどの金属光沢をした美しい鳥が飛び回るようになる。この鳥が鳴いているのだろうとブッポウソウと呼ばれるようになった。

しかし、昭和10年、ブッポウソウの鳴き声を、愛知県の鳳来寺山からラジオで放送したことがきっかけで、鳴き声の主は、フクロウ科で一番小さいコノハズクということがわかった。飼っているコノハズクが同じ声で鳴くという情報や、鳴いている鳥を撃ち落として調べたらコノハズクだったという。そんなことから、ブッポウソウを「姿のブッポウソウ」、コノハズクを「声のブッポウソウ」と呼んだりしている。

美しい羽色の「姿のブッポウソウ」、鳴き声はゲッゲッ、ゲゲゲッとお世辞にもいい声とはいえない。
「声のブッポウソウ」と呼ばれる、フクロウ科のコノハズク。

一時は絶滅が心配されるほど減ってしまった鳥

わたしが鳥の写真を撮り始めた40年ほど前は、東京の奥多摩の氷川神社や御岳神社など、杉などの古木がある神社仏閣では、どこでも数番のブッポウソウが子育てしていて、特別に珍しい鳥というほどではなかった。しかし、ほどなくして、あれよと言う間に数を減らしてしまった。同時に、体の大きさも、昆虫を餌にしているということでも似通ったヨタカも、数を減らしてしまった。時期も同じだし、全国的にも数を減らしてしまったので、特別の原因があったのだろう。

夏鳥が絶滅を危惧するほど数を減らしてしまうと、回復するのは容易なことではない。しかし、ブッポウソウについては、広島県で巣箱をかけて保護を始めたことで数は回復していった。

いまでは、岡山県や愛知県、高知県などでも巣箱をかけ、順調に増えている。ブッポウソウが、樹洞などで子育てする鳥だったことが幸いしたといえるだろう。地上で子育てするヨタカのほうは、数を減らしたままである。

四万十川の上流部では、庭先に巣箱をかけている。

鳥が身近にいる風景

高知県四万十川の上流部では、川沿いのいくつかの集落の住人が、庭先に巣箱をかけてブッポウソウが子育てするのを楽しみにしている。特徴的なのは、組織立っていたり、保護活動だと力を入れたりはしていないことである。毎年帰ってきてくれること、ヒナが無事に巣立つことが、単純に楽しく、うれしいことだと思っているのだ。こういう鳥との距離感は捨てがたい。

ブッポウソウは、トンボやセミ、カナブンなど飛翔する昆虫を飛びながら捕らえて食べる。その捕らえた虫を、春の求愛のころには、メスにプレゼントする姿が観察できるし、暑い日には水浴する姿も見ることができる。

子育ての時期は、夕方暗くなって肉眼では見えなくなるまで活発に餌を運ぶ。そんな姿を、野良仕事の合間や、夕方、一風呂浴びて縁側でビール片手に眺めるのも、山家に住むもののささやかな楽しみなのだ。

夕日を浴びて、深い色合いに輝く。
左、メスに餌をプレゼントする。右、四万十川で飛びながら水浴する。

写真・文: 和田 剛一 Goichi Wada

野鳥写真家。「日本の野鳥の生活感ある写真」を求めて全国を旅している。高知県在住。
主な著書に「WING野鳥生活記」「SING野鳥同棲記」(小学館)、「Sing! Sing! Birds!」(山海堂)、「野鳥撮影のバイブル」(玄光社)などがある。