九州南端の土地、鹿児島といえば「薩摩の国」。江戸時代の雄藩、薩摩藩がその礎を築いたといっても過言ではありません。古くは中国、琉球国との交流があった土地柄。そんな異国文化を受け入れ、日本流(薩摩流)に取り込んで、独特の文化を培ってきました。
そんな鹿児島県に伝わる料理は薩摩藩の逸話に溢れたものばかり。江戸時代に、土佐の漁師によって鰹節の製造技術がもたらされ、藩の支援を受けて繁栄したカツオの町、枕崎。まずは350年を越える歴史あるカツオ漁の町で、カツオのタタキをいただきました。
取材・文 : 富山紀子 Noriko Tomiyama / 写真 : 木下幸二 Koji Kinoshita
Keyword : 鹿児島県枕崎市 / 枕崎お魚センター / カツオのわら焼きタタキ
日本屈指のカツオ漁の拠点、枕崎港にてカツオのタタキを伝統のわら焼きで
枕崎は、古くは小舟で、江戸時代には帆船を使い、沖合を回遊するカツオを、命がけで釣り上げてきました。漁期は通年。「春から夏にかけて黒潮にのって北上する初ガツオは赤身でサッパリとした味わい。9月から12月に南下する戻りガツオは、脂がのってまたうまい!」と『枕崎お魚センター』のスタッフは話してくれました。
今回はここで観光客も体験できるという「カツオのわら焼きタタキ」を実体験。
タタキの由来は、漁師たちのまかない飯だったという説や、臭みをとるために表面をあぶり、表面に塩や酢をかけて包丁でペタペタたたいて味をなじませた、など諸説ありますが「カツオのクセのある味をやわらげたのでしょうね。わらを使ったのは風味づけだと思います。燻製のようにね」とのこと。
強火で表面を一気にあぶり、氷水でしめたカツオのタタキはトロリとしてほのかにわらの香る絶品。さらに希少なカツオの腹皮や、即席味噌汁「茶節」で、枕崎の伝統の味を堪能しました。
■カツオのわら焼きタタキ
わらを焼く高温の炎で、表面を一気にあぶったカツオは舌触り滑らか。特有の臭みがいっさい感じられない。タマネギやショウガ、ニンニクと合わせてポン酢をかければペロリとたいらげられる。
市場でカツオをさばいてもらう
『枕崎お魚センター』の方にカツオをさばいてもらいました。
①まずは、カツオ専用の身おろし包丁を使い、いちばん最初に切り取るのは腹皮。その後ビンタ(頭)の順に切っていく。
②身おろし包丁を背骨に沿って滑らせて身を分けていく。
③背中部分が「雄節(おぶし)」、お腹が「雌節(めぶし)」。この形で鰹節も作られていく。
「背と腹で一対。婚礼の引き出物にも使われる縁起物だよ」。
新鮮なカツオで伝統のわら焼きを体験!
①施設内に設置したドラム缶式の炉にわらを入れて着火。一気に立ちのぼる炎の上にカツオをのせた網を置き、短時間で表面をあぶっていく。カツオは皮のあるほうから焼くのがコツだ。
②表面全体に火が通ったら、そのまま氷水へ投入。黒い焦げを払い、水気をふき取って完成だ。
『枕崎お魚センター』でのわら焼き体験は1人1,000円(税込)~、体験+食事付き2,000円(税込)〜。予約が必要です。
■カツオの腹皮
1尾に1つしか取れないお腹側の身と皮。マグロでいうトロの部分だ。昔はこの腹皮を干したものに花を飾り、客人にかぶってもらってもてなしたそう。塩焼きにすれば大変おいしい。
■茶節
削りたての鰹節と、麦味噌を茶碗に入れ、そこへお湯(もしくはお茶)を注いだだけの、枕崎流インスタント味噌汁。鰹節の本場ならではの贅沢な味。たっぷり入れた削り節まで残さずいただく。鰹節の削り体験は茶節一杯と削り節のお土産つきです)。
<枕崎お魚センター>
鹿児島県枕崎市松之尾町33-1
Tel:0993-73-2311
営業時間 9:00~17:00 年中無休
http://makurazaki-osakana.com