現在、国内には1400〜1600の蔵元があるといわれています。数値に幅があるのは、実際稼働している蔵の数を把握することが難しいからです。同様に、出回っている銘柄数も正確な数を述べることはできません。1万5000という声もあれば、2〜3万種類はあろうという声も聞かれます。
いずれにせよ、これだけ多種多様な日本酒が出回っているのですから、「どれを選べばいいかわからない」という人がいても無理からぬことでしょう。
そこで、ここでは選び方の目安になる情報として、日本酒の種類について解説します。

日本酒の種類

日本酒の原料は米と水、米麹ですが、これは「純米酒」に限ったお話です。純米酒とは別に、日本酒には、米と水、米麹に加えて、「醸造アルコール」と呼ばれる蒸留アルコールを添加した「普通酒」、あるいは「本醸造酒」という名称で販売されているお酒があります。瓶のラベルなどの原材料欄に「醸造アルコール」と書かれていれば、純米酒ではないということになります。

かつて日本には、アルコール度数による一定の規格に沿って、お酒を「特級酒」「一級酒」「二級酒」に分類する級別制度がありました。1949年に設けられて1992年に廃止されるまで、日本ではこの級別制度によって、お酒の等級が決められていました。

現在は原料、製造方法などの違いによって「大吟醸酒」「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「吟醸酒」「特別純米酒」「特別本醸造」「純米酒」「本醸造酒」の8種類に分類される「特定名称酒」があり、それ以外の「普通酒」とは区別されて売られています。

特定名称酒は、国税庁が定めた要件を満たして造られた「一定水準以上の高級酒」と見なされたお酒で、原料に使われる米の等級にも厳しい条件が義務付けられます。特定名称酒のうち、「大吟醸酒」「吟醸酒」「特別本醸造」「本醸造酒」の4種類には、醸造アルコールが添加されていますが、その量は使用する米の重量の10%以下に制限されています。嗜好品ゆえ「甘口」「辛口」の好みも分かれることでしょう。この違いは、酒の設計と搾るタイミングにあります。

甘さを残すことを目的に、もろみにまだ糖の残っている時期に搾れば、そのお酒は「甘口」になり、逆に酵母が完全に糖化を終えてから搾れば「辛口」の酒がなるというわけです。ただし、「辛口」と書かれたお酒の中には、醸造アルコールを添加して、人工的に「辛口」に仕上げたものもあります。

■8種類の特定名称酒とその要件

■ひと目で分かる特定名称酒と精米歩合

日本酒の魅力

本酒の魅力は、何といっても食事と一緒に楽しめることです。食事のときに、そのお酒の個性を頭に入れておくと、料理とのマッチングをより深く味わうことができます。

基本は、食事の進み具合に合わせて、お酒の香り、味わい、熟度を変えていくということ。香りなら、食前酒には香り高いものを。食事が進むにつれて控えめな香りのお酒に変えていきます。味わいは淡麗なものからはじめて、濃醇なものに。熟度は若い新酒からはじめて熟成したものに、というように。

これだけ種類も豊富な日本酒です。季節の味や熟成の度合いを知ることでも日本酒の新しい世界に出会えるはずです。

■精米歩合とは

米の表層部にはたんぱく質や脂肪が含まれており、そのままにするとこれが順調な醗酵の妨げとなり雑味となってしまうのため表面を磨きます。精米歩合とは、玄米を精白した後の残った割合を示す数字で、精米歩合が低いほど、お米を小さく磨き込んだことになります。食用の白米の場合、精米歩合はだいたい90~92%くらいです。