日本列島は南北に長いため、気候区分は亜熱帯から亜寒帯までと幅広い上、海岸線から高山帯までと地形の変化も複雑で、さまざまな環境に適応して暮らしている野鳥の種類も600種前後ととても多くなっています。そんな野鳥たちの暮らしぶりを、たまに小動物もおりまぜながらご紹介します。(和田剛一)
写真・文 : 和田 剛一 Goichi Wada
鳥が鳥を食らう
今回は、小鳥専門のハンター、コチョウゲンボウ。名前は小さなチョウゲンボウという意味。鳥が鳥を食らうといえば、一瞬とまどったりするのだけど、自然界では、そんなことに違和感をおぼえるほうがおかしい。とにかく、鳥たちはあらゆるものに食べられてしまう。子育て中の巣の中の卵、ヒナ、餌を運ぶ親鳥など、あらゆる段階で食べられてしまう。狙うものは、ヘビをはじめ、イタチやテンなどの小動物、カケスやカラスなどといった鳥たちまで数多くいる。人間だって、卵や焼き鳥などが大好きなのだから、自然界における弱い鳥たちの位置というのが、なんとなく想像できるのではないだろうか。
小鳥を専門に狙う小型の猛禽は、ハヤブサ科のハヤブサ、コチョウゲンボウと、タカ科のオオタカ、ハイタカ、ツミなどが代表的なものだ。
科によって違う狩の方法
タカ科とハヤブサ科では、狩のやりかたは、少し違っている。タカ科のタカたちは、森や林の中、林縁部などで、木の枝に止まってじっとチャンスを待ち、木などの障害物を巧みにかわして捕らえるやりかただ。
ハヤブサ科のほうは、スピードにものをいわせて追いすがって捕らえる。狩をするときのハヤブサのスピードは中途半端なものではないので、自分が怪我をしないよう、海上や農耕地など、障害物のない広い空間を狩場としている。コチョウゲンボウも小さいとはいえ、そのスピード感は、ハヤブサにも引けを取らない。農耕地や河口の中州などで、上空を飛ぶ小鳥を見つけると、猛スピードで追撃して捕らえる。渡の時期、メジロやキビタキなど、森林性の小鳥が、このような広い場所を通過するとき、お腹を空かせたコチョウゲンボウに見つかると、助かる確率はゼロに近い。コチョウゲンボウは、時に、葦原をネズミを狙って巡回飛行しているチュウヒ(トビくらいの大きさのタカ)の後ろを飛びながら、チュウヒの影に驚いて飛び出す小鳥を捕まえるなんて、ちょっとちゃっかりした狩をやることもある。
休み場とねぐら
お腹がいっぱいになると、狩場の中の草陰や、畑の畔などで休息する。数時間は、うとうとしたり、羽繕いをしたりとのんびりと休む。やがて、お腹が空いて、小鳥たちの動きが活発になる時間帯になれば、また狩にでかけるのだ。冬鳥のコチョウゲンボウの1日は、狩と食事と休息で過ぎていく。夕方になると、葦原や農耕地の草むらなどの決まったねぐらに帰る。ねぐらは、複数の個体が集まってくることもある。