四季の巡りと暮らしの節目に、神に祈り、祭りを行う。
人々の熱き心、ほとばしる想いの瞬間を、写真家・森井禎紹が切り取ります。

あまめはぎ=石川県鳳珠郡能登町

「あまめ」とは、囲炉裏で暖を取り過ぎると体にできる火だこのこと。

あまめはぎは、立春を迎えるのにいつまでも囲炉裏にしがみついていてはいけないと、怠け癖のついた人たちを戒める、能登に伝わる神事です。

一種の節分祭で、暖かい囲炉裏の側で親や子が集まっていると、そこに小学生が扮する鬼が登場してきます。蓑を着て、手にサイチという手桶や斧、出刃包丁、鉄棒を持って「怠けてあまめを付けているのは誰だ。言うことを聞かないのは誰だ」と騒ぎながら、包丁であまめをはぎ取る所作をします。幼い子どもたちは鬼の面とその所作に驚いて、親にしがみつき泣きじゃくる。とても怖い思いをさせるが、良い子になるようにとの願いが込められています。

各家を周り、怠け心を戒めるこの神事が終わると、能登にも遅い春が訪れます。

あまめはぎ

開催日:毎年2月3日
開催地:石川県輪島市/鳳珠郡能登町
能登町ふるさと振興課 ☎0768・62・8532
http://www.town.noto.lg.jp/
*国指定重要無形民俗文化財

写真・文: 森井 禎紹 Teiji Morii

写真家。1941年生まれ。兵庫県三田市出身。1964年頃より趣味で写真を始める。写真コンテスト、カメラ雑誌月例コンテストに応募、入選回数362回を数える。1990年プロに転向、ライフワークとして日本全国の祭りを取材。『祭りに乾杯』『祭り旅』『祭り日』他多くの写真集を出版。現在、社団法人写真家協会(JPS)会員、一般社団法人二科会写真部常任理事、兵庫県写真作家協会最高顧問など。