植物由来の和ろうそくが持つ柔らかな光。
ゆっくり揺らめいて、空間を温かく照らし出す。

京都・伏見にある和ろうそくの老舗「京蝋燭(きょうろそく)なかむら」の暖簾をくぐると、蝋(ろう)が溶ける香りがほんのりと漂います。

「嫌な匂いじゃないでしょう? 自然から生まれたものだから、人の体に馴染むのです。数時間も経てば匂いを感じなくなってしまいますよ」

そう語ってくれたのは、京蝋燭なかむら4代目の田川広一さんです。店内では、大きな釜で溶かした蝋から和ろうそくが作られていく様子が見られます。

最近その数がめっきり減った和ろうそく。「和ろうそく」と銘打って売られているものでも、実際は西洋ろうそくの場合が多いと田川さんは話します。現代の西洋ろうそくの主な原料は石油系で、燃やすと油煙が出るのが特徴です。それに対して和ろうそくの原料は全て植物性。ハゼから作られる木蝋と、米ぬか蝋とパーム椰子蝋をブレンドしたものの2種類があります。

和ろうそくは、燃やしたときに蝋が垂れないうえ、出るのは少量の「すす」だけです。これは和ろうそくが寺院で重宝される所以の一つ。文化的価値の高い仏具を汚す心配がないからです。年末に寺院で行われる「すす払い」は、本来和ろうそくのすすを落とす、という意味があるそうです。

また、和ろうそくの太い芯の部分は、筒状に巻いた和紙にイグサの髄を巻いたもの。中に空気が入っているため、和ろうそくの火は風がなくてもゆらゆらと揺れています。また温かい橙色の灯りも、融点が低い和ろうそくならではです。

「できた芯を竹串に刺して木型に入れ、そこに蝋を流し込んでろうそくの形に固めます。最後に手作業でコーティング作業をして竹串を抜けば完成。なかには絵付師が美しく彩色するものもあります。蝋の固まる時間は季節によってさまざま。気候に合わせ、溶かす温度や作業の速さを調節しています」と田川さん

南北朝時代から存在したとされる和ろうそく。多くの人の手間暇がかかってできあがる1本のろうそくからは、自然に寄り添ってきた日本の暮らしがうかがえます。

固まったろうそくに蝋をコーティングする田川さん
上/隙間風の多い日本家屋でも火が立ち消えないよう、太い芯が考案された。下左/竹串を入れた木型に蝋を流し込み、ろうそくの形に固める。下右/原料となる固形のハゼ蝋と通称「ちぎり子さん」が摘むハゼの実。

京蝋燭なかむら 中村ローソク店

京都府京都市伏見区竹田三ッ杭町57-8
☎075-641-9381(代)
http://www.kyorousoku.jp
営業時間:9時~17時30分
定休日:日曜、祝日(1月~9月は第2・4土曜)
最寄駅:近鉄京都線、京都市営地下鉄烏丸線「竹田駅」

※ホームページのオンラインショッピングから商品の購入ができます。