日本国内はどこへ行っても魅力的な鉄道が走っています。鉄道旅は、他の交通機関では味わえない、その地域の魅力を感じることができます。ここでは、日本の鉄道旅の魅力をシリーズでお伝えします。今回は魅力的で便利な観光特急列車の旅です。

都心から観光地まで乗り換えなし「便利な観光特急の旅」

「温泉地へ直通電車で行きたい」「高速道路は混雑するので御免だ」と考える人には、観光地まで乗り換えなし行ける列車があると大変助かります。日本人はもとより、海外からの観光客からも喜ばれます。首都圏では、こうしたニーズに応じた観光用の特急がいくつも運転されています。

1.新宿から富士山の玄関口をめざす

日本を代表する観光地富士山。ここへ向かう観光用の特急は、複数の会社の路線を直通運転してます。その代表が、新宿始発で小田急線を走り、途中の松田からJR御殿場線に入り、静岡県の御殿場まで運転される、小田急ロマンスカー「ふじさん」です。

新宿と御殿場を結ぶ「小田急ロマンスカー・ふじさん」

以前は「あさぎり」の愛称で沼津まで運転された時期もありましたが、現在は御殿場が終点です。御殿場は富士山へ向かう人たちの玄関口だけでなく、山中湖や箱根などのリゾート地へ向かうこともできます。また御殿場には、海外からの観光客から非常に人気のある「御殿場プレミアムアウトレット」があります。

この小田急電鉄は東京メトロとも協力して、千代田線の北千住始発で代々木上原から小田急線に入り、人気の高い箱根エリアの表玄関の箱根湯本まで直行する観光特急「メトロはこね」を運行しています。大手町など都心から乗り換えなしで箱根まで行くことができます。箱根は芦ノ湖や大涌谷が有名ですが、宮の下、強羅など多くの温泉郷があります。首都圏で人気の観光地で、海外からの観光客も多く見られます。

所用時間は目安です。

2.山梨県側から富士山へ向かうルートも

富士山へ向かうもう一つのルートが山梨県側です。ここを走る列車もあります。東京の新宿からJR中央線で山梨県の大月まで行き、富士急行の河口湖駅まで乗り入れるものです。多くが快速運転のため特急料金不要です。日帰り旅行客やハイキング客を対象に、土日中心のダイヤが組まれています。また直通電車ではありませんが、大月始発で富士急行線内の観光特急は、毎日運転されています。

成田空港駅始発でJRの新宿、大月を経由して河口湖まで行く、特急「成田エクスプレス」も1日1往復運行されており、海外旅行者には魅力的な列車です。また成田空港駅からは羽田空港駅へ直通運転する「エアーポート特快」も大変便利です。

成田空港と河口湖を結ぶ「成田エックスプレス」

京成電鉄、都営地下鉄、京浜急行の3社の私鉄を続けて走ります。特急料金も不要です。富士急行の沿線には、海外の観光客を中心に密かなブームとなった「新倉浅間(あらくら・せんげん)神社」があります。下吉田駅で下車して歩いて行くことができますが、この神社にある忠霊塔から富士山を見る景観は絶景です。京都と富士山を同時に見られる感じがする、と思う人も多いようです。

下吉田駅から歩いて行ける新倉浅間神社。忠霊塔から富士山を見る景観は絶景
時間は目安です。

3.伊豆半島へ向かう歴史ある特急

東京から東海道線の横浜、熱海を経由して、伊豆急行線や伊豆箱根鉄道線に直通運転している特急があります。戦後早い時期から準急電車「いでゆ「いこい」」の愛称で運転されてきた歴史がある列車です。当時はまだ伊豆急行線は未開通で、伊東までの運転でした。伊豆半島の中には、熱川、稲取、河津、下田、長岡、修善寺、湯ヶ島、湯ヶ野、松崎といった名湯が数多くあり、伊豆急行線や伊豆箱根鉄道線を利用するのが最も便利です。伊豆の奥座敷といえる静かな温泉地が多く、シニア層に人気があります。東海道新幹線から熱海以外の温泉地へ行くには、乗り換えが必要になります。

これらの特急は東京駅始発でしたが、最近では新宿や池袋始発も増え、利便性が向上しています。「踊り子」「スーパービュー踊り子」の愛称がついた列車で、とくに乗客のニーズに合わせ、土日に増発運転されています。「スーパービュー踊り子」と呼ばれる列車は、座席の位置も高く窓も大きいため、雄大な景観を眺めて旅を楽しむことができます。

伊豆方面直通、人気の踊り子号
時間は目安です。

4.ライバル会社が手を組み日光へ

世界遺産となっている日光は、日本を代表する観光地です。東照宮を始め、華厳の滝、中禅寺湖、戦場が原を訪れる観光客は年々増加しています。日光には玄関口として二つ駅があり、東武鉄道とJRがしのぎを削ってきました。東武鉄道は浅草始発の豪華な特急列車「スペーシア」を走らせています。JRは戦後間もなく、上野発で宇都宮経由の直通準急電車を「日光」という愛称で走らせていましたが、東北新幹線誕生後は直通運転をとりやめています。

そのため乗客の獲得面では、東武鉄道の優位が長い間続いています。JRは東北新幹線から宇都宮で乗り換える必要があり、利便性に欠けています。一方東武鉄道は、東武日光の手前、下今市から分岐し鬼怒川温泉方面への路線があり、特急「スペーシア」も運行しており、利便性でもJRを圧倒しています。

淺草と日光を結ぶ「東武鉄道の特急・スペーシア」

しかし乗車できる駅が浅草と北千住では、東京西部や神奈川方面の人たちにとっては便利ではありません。そこで東武鉄道はライバルだったJRと手を組み、新宿を起点に池袋、大宮から乗客を乗せ、日光、鬼怒川へ向かうルートを誕生させました。JRの湘南新宿ライン、宇都宮線を経由して、栗橋駅から東武日光線に入ります。栗橋駅では専用線に停車し、乗務員の交代が行われます。車輛もJRと東武鉄道の両方が使用されています。

時間は目安です。