日本国内はどこへ行っても魅力的な鉄道が走っています。鉄道旅は、他の交通機関では味わえない、その地域の魅力を感じることができます。ここでは、日本の鉄道旅の魅力をシリ日本国内はどこへ行っても魅力的な鉄道が走っています。鉄道旅は、他の交通機関では味わえない、その地域の魅力を感じることができます。ここでは、日本の鉄道旅の魅力をシリーズでお伝えします。
今回は人気のSL、機関車トーマスの旅です。

これまでも多くのSLが走る

大井川鉄道は静岡県の中部、東海道線の金谷駅から千頭(せんず)を経由して、井川までのローカル私鉄で、会社の経営自体も決して楽ではありません。金谷=千頭間が本線、千頭=井川間が井川線です。金谷から千頭までが通常の規格の線路幅で電化されており、千頭から先はアプト式トロッコ列車になります。電車区間には、東京や関西の大手私鉄の車輛が譲渡され、元気に走っています。地元の人口も減少傾向が続き、マイカーの普及もあり、会社経営を維持するのも大変です。そのため、以前からSLの運行には力を入れ、現在では4機のSLが活躍しています。

この機関車トーマスの運行は2013年から始まりました。 当時の大井川鉄道は大変な経営危機に見舞われており、この運行開始が経営改善への大きな助けとなったことは確かです。

大井川鉄道の主役となった機関車トーマス

日本での「機関車トーマス」のライセンスは、ソニーの関連会社ソニー・クリエイトプロダクツが所有しており、大井川鉄道はそこから供与を受けています。ソニー側にとっても、実際に多くのSLを走らせていた実績のある大井川鉄道と手を組むことで、実際に機関車トーマスを見たり乗ったりすることができ、トーマスの知名度をさらに上げるという、双方にとって好ましい関係です。

機関車トーマスはいつ動くの?

SLの運行は平日1日1往復、機関庫のある新金谷と千頭の間を運行し、土曜休日や観光シーズンには最大3往復が運転されます。ほぼ毎日1往復運転されるのは、通常のSLが牽引する「かわね路」号で、機関車トーマスではありません。 絵本から飛び出した青色の機関車トーマスが運行されるのは、観光シーズンの土日が中心で限定運行です。ですから季節列車の一つのため、なかなかチケットが取れない状況が続いています。また人気が高いため、大井川鉄道自体でチケットを販売するのではなく、ネット販売の専門会社に委託し、ネットで予約し抽選する形になっています。

最近ではパックツアー商品として、新金谷までバス、そこから機関車トーマスに乗り千頭へ到着、近くの温泉に1泊するタイプが販売されています。機関車トーマスはあまりに有名ですが、兄弟列車「機関車ジェームス」が運転される日もあります。機関車トーマスなどのSLが引く客車は、1940年代につくられた旧国鉄時代の車輛で、昭和を彷彿とされるレトロな雰囲気に溢れています。ただ冷房などの近代的設備はありません。連結する客車が多くなると、SLの力だけでは牽引する力が弱いため、補助の電気機関車が後ろに着きます。

新金谷から機関車トーマスに乗る

金谷の一つ先の新金谷駅が機関車トーマスの出発駅です。新金谷を出るとしばらく街中を走りますが、しばらく走るとしだいに山間部へ入っていきます。やがて大井川を見ながら、川に沿って上流へと向かいます。 途中主要駅である家山にトーマス号は停車します。待ち受けていた人などがトーマス号を撮影します。この家山は、静岡県を代表する桜の名所として有名で、桜の季節には多くの人が訪れます。

家山を過ぎると茶畑の中を走り、やがて最初に大井川を鉄橋で渡ります。

大井川第1鉄橋を渡るトーマス

この大井川第一鉄橋の脇が川根温泉で、日帰り入浴施設があり、入浴客が列車に手を振る光景も見られます。さらに二度ほど大井川を渡り、1時間以上かけて、終着駅の千頭に着きます。その間、車内では特製弁当や鉄道グッズに販売、昔の車掌の服装をした乗務員による、沿線の説明などが行われ、乗客を楽しませます。

金谷方面から到着する列車は、ここ千頭が終点です。この先はかつてダム建設のためのトロッコが走っていた幅の狭い森林鉄道アプトラインに乗り継ぐことができます。大井川に沿ってさらに登って行きます。その途中には、発電用につくった人造湖の島に造られた「奥大井湖上」駅という有名なスポットがあり、晴れた日には絶景を見に多くの人が訪れます。

千頭駅構内は子どもたちのイベント広場

トーマス号の終着駅千頭駅構内は、イベント会場になっています。鉄道に乗って訪れる人だけでなく、マイカー組もかなりおり、大変な賑わいです。

千頭駅構内のイベントの様子

トーマス号が運行される日には、千頭駅構内に「機関車ヒロ」などトーマスの兄弟機関車が並び、撮影会やグッズの販売が行われ、とくに子どもたちにとっては非常に楽しいイベント会場です。トーマス号が運行されない日と比較すると、その差は歴然です。始発駅の新金谷では見ることのできない光景が見られます。トーマス号に乗ることが出来なかった人も、別の列車で到着しイベントに参加できます。

もう一つ見せ場があります。千頭駅構内には機関車の方向転換をするための転車台があり、機関車の転換作業が見られることです。

転車台にのり方向転換する機関車トーマス

到着した機関車トーマスが、新金谷に引き返していくために客車から離れ、転車台に向かいます。転車台に乗ると方向転換が行われ、その転換の様子を間近で見ることができます。

この転車台は自動では動かないため、何人かの職員の手で動かし方向転換をします。この作業をみるため、 子どもだけでなく、大人の鉄道ファンもこの光景をカメラに収めようと列をなしています。SLが入り始めた当初からしばらくは、この転車台が整備されておらず、方向転換ができないため、金谷方面に戻る機関車は、後ろ向きのまま客車を引いていました。転車台が整備されたことで、機関車の向きが変えられるようになりました。

■大井川鉄道 URL⇒ http://oigawa-railway.co.jp/access

大井川鉄道で活躍する蒸気機関車

大井川鉄道では、現在4機のSLが元気に走っています。また1機は整備のため、運転を休止しています。昭和の10年代に製造されたもので、90年近くが経過しており、つねに修理をしながら走らせています。概要は以下の通りです。

<C10形8号機> 

1930年製。国鉄時代新小岩機関区配属後、日本各地で活躍。最後は岩手宮古市の山田線で最後の仕事。1994年に大井川鉄道に入線。

家山駅に停車するC10形8号機

<C11形190号機> 

1940年製。国鉄時代は主に西日本で活躍し熊本県で廃車。復元後、2001年に大井川鉄道に入線。

<C11形227号機> 

1942 年製。C10形の改良型で高性能。国鉄時代は北海度などで活躍。1956年に大井川鉄道に入線。機関車トーマス仕様となる。

<C56形44号機> 

1936年製。国鉄時代は北海道で活躍。太平洋戦争開戦時に戦後東南アジアに渡る。戦火を免れ、2011年に里帰りし大井川鉄道に入線。

<C12形164号機> 

1936年製。中央本線で活躍した。現在は運転休止中。