地を覆う深緑の苔が描きだす幽玄境、究極の世の真理を問う夢想疎石の傑作

池泉と枯山水で構成された疎石理想の修禅求道の庭。

園内全域が見事な苔に覆われることから、一般に「苔寺」の名で親しまれています。寺伝によれば創建は8世紀半ばとされ、その後長らくの荒廃期を経て、12世紀末に浄土宗の二寺がこの地に再興されました。そして、平坦部に池泉式、山裾の斜面に枯山水式の庭がつくられ、それが今日の庭園の原型といわれます。

14世紀半ばには夢窓疎石が招かれ、二寺を統合して西芳寺と改め、臨済宗に改宗して伽藍を整え、同時に庭園を修復して、この地に禅学修行の理想郷を出現させました。以後広く名園として知られ、後世の作庭や禅宗建築に多大な影響を及ぼし、これに倣って足利義満の鹿苑寺や義政の慈照寺庭園がつくられました。

枯山水庭園の龍門瀑。1段目の滝を越え2段目に向かって身をひるがえす鯉魚の姿を描いている。
枯山水庭園の龍門瀑。1段目の滝を越え2段目に向かって身をひるがえす鯉魚の姿を描いている。

深緑の苔が描きだす幽玄境、究極の世の真理を問う夢窓疎石の傑作。

池泉庭園では、疎石の名づけた黄金池の水面以外は一面厚い苔に覆われてまさに幽玄の世界、俗世を遠く離れたかのような静寂に支配されます。池の南岸寄りには中島が浮かび、その護岸に由緒ある三尊石組が半ば苔に埋もれるように横たわります。

上部の枯山水庭園は深山の趣を呈し、その中に疎石の木像を安置した指東庵が静かにたたずみます。庵の東には三段構成の枯滝石組があり、その豪快な姿は疎石の気迫に満ちた造形を今に伝える傑作といわれます。

現在の建物はすべて後世の作ですが、庭園の地割りと石組は疎石時代のままで、苔の下にはまだまだすばらしい石組が潜んでいるようです。

西芳寺庭園(さいほうじていえん)

池泉回遊式/枯山水/史跡/特別名勝
所在地:〒615-8286 京都市西京区松尾神ケ谷町56
tel:075-391-3631

アクセス:京都バス(63または73系統)「苔寺・すず虫寺」下車、徒歩3分