コツコツと、規則正しく編まれた網目。お料理の相棒に、京都の手編み金網はいかが。

店内に入ると、針金を切って、曲げて、根気よく金網を編み上げていく職人さんの姿が見えます。ここは京都の金網専門店、辻和金網。焼網、杓子、ザルなど金網でできた道具がずらりと並び、金属特有の柔らかい光沢を放っています。

「金網づくりは、目を六角形に編む亀甲編みが一番難しい。目の大きさを揃えられるようになるには時間がかかります」と話すのは3代目店主の辻泰宏さん。先代の善夫さんと店を切り盛りする傍ら、店の隅では常に金網を編み続けています。

左上から右下に、手付焼網(受け網付)、手編みコーヒードリッパー銅、ゆどうふ杓子(特丸大)、茶こし大)

辻和金網は昭和2(1927)年、泰宏さんの祖父・和三郎さんによって開業されました。店名は和三郎さんの〝和〞の字をとったもの。以来、親子3代で技術を継承しています。

最近人気なのは、干し野菜を作る干し籠。5年程前に手作りを始めた新商品ですが、いまでは予約数カ月待ちの大人気商品です。

商品が所せましと並ぶ店内。奥に見えるのが泰宏さんの作業場

そのほか、辻和金網ではお客さんの要望で商品を作ることもしばしば。個人の鍋にぴったりの蓋や、お皿に合った油切りの網、コーヒーのドリッパーなど、注文は多岐にわたります。これまでには〝パリコレで使う靴〞なんて一風変わったオーダーもあったのだとか。まずはそれぞれに合った専用の型を作るのが一仕事で、試行錯誤の末に生まれた型を使って丁寧に金網を編み上げていくそうです。

左)隣り合った2本の針金をねじり、規則正しい六角形の網目をつくっていく「亀甲編み」。(右)金網の美しい曲線を描くために欠かせない型。

平安時代に始まったとされる京金網の伝統は、時代とともにだんだん衰退しています。京都に多くあった金網の専門店も、高度経済成長期にプラスチック製品が登場したことによってめっきり数が減りました。しかし最近は若い人が来店することも多いと泰宏さんは話します。

「若い世代で、手作りの良さや魅力が見直され始めているのかもしれません。金網でできた道具には、他にはない丈夫さや、使い勝手のよさがあります。特にザルはプラスチック製とは水の切れが全然違いますよ」

部分によって針金の太さ、編み方を調節することで美しい曲線を描く

職人が減っているのは事実ですが、技術の継承を意識はしていないと泰宏さん。「教えられることはほんの少しで、後は受け継ぐ方が頑張ることですから」。そう話すと、泰宏さんはまた黙々と金網を編み始められました。

2代目辻善男さん(右)と、息子であり3代目の辻泰宏さん(左)

辻和金網
住所:京都府京都市中京区堺町通夷川下る亀屋町17
Tel:075-231-7368
http://www.tujiwa-kanaami.com
最寄駅:地下鉄烏丸線『丸太町駅