日本は、各地の風土を活かした魅力的な郷土料理であふれています。今回は、寒さ厳しい冬においしいご飯を食べる北国の食の知恵、そして豊かな味覚を探りに食材王国・新潟県へ。村上市で出会った「塩引き鮭」をご紹介します。

冬の風物詩「塩引き鮭」は神様に捧げるご馳走!

村上城の城下町。黒塀の風情ある街並みが続く「町人町」の一画で、200年前から「塩引き鮭」を作り続けてきた老舗〈越後村上うおや〉さんへ。ここでは若くて形の良い鮭を選んで、美しい塩引き鮭を作ります。

まずは数日間の塩漬けに。その後水で塩を洗い流し、丁寧に皮の表面を磨く細やかな作業が特徴です。その後、「鮭工場」の2階に作られた天井の高い干し場で、北西の寒風に数週間さらすのですが、その間に発酵が起こり、うまみ成分が熟成されるのです。

今でも新潟県ではこの塩引き鮭をお歳暮や贈答品として使います。大晦日には神様に捧げ、「年取り魚」として食べるのが習わし。鯛より、鰤よりありがたい、魚の王様なのです。

「今は自分でさばく人も少ないからね」。贈答には職人が見事に切り分けた塩引き鮭1尾分が人気
「鮭工場(こうば)」の入り口にも塩引き鮭ののれんがかかる
特別に作っていただいた鮭料理。手前左は「塩引き鮭の塩焼き」。その上から時計回りに、地元でしか食べられない新鮮な「鮭の白子の刺身」、腹子も入って贅沢な「鮭の飯寿司」、頭の軟骨を使う「氷頭なます」、銘酒に浸けていただく「酒びたし」。他に、はらわたを使った汁物など、頭から内臓まで余すところなく調理される

三面川(みおもてかわ)の鮭漁を見学

市内を流れる三面川は、今から250年前に世界で初めて鮭の天然卵を保護しながら鮭漁を行う制度が整った場所。10月下旬から12月にかけて、遡る鮭を伝統の「居繰網漁(いぐりあみりょう)」とウライという仕掛けで獲る「一括採捕」の2つの漁が行われています。午前と午後の1回ずつ、漁の時間になると地元の人たちが新鮮な鮭を求めて漁協の市場に直接買い付けに。家庭でもごく自然に鮭1匹を丸ごと調理できます。

越後村上うおや
新潟県村上市大町4番3号
TEL:0254-52-3056
https://www.uoya.co.jp
 

「鮭はどこを食べてもおいしいのよ」という女将の上村八恵子さん。