江戸時代から変わらず愛される品々。
磨きぬかれたその伝統と技術は暮らしの中で磨かれ、
日本の四季や生活に馴染み、当時の風情を感じさせてくれます。
今回は、涼しさを演出する夏の品々です。

江戸結桶/桶栄

桶栄(おけえい)は江戸結桶(えどゆいおけ)の伝統を受け継ぐを老舗工房です。

1887年、桶栄の創業者、川又新右衛門は、全国から良質な木材の集まる木場近くの深川に店を構えました。新右衛門の作品は、当時隆盛だった深川の料亭で使われ、その造形美と丈夫さが評判となり多くの料亭がその作品を求めたといいます。
現在でも、桶栄では、当時と変わらぬ木の合わせ目だけで水が漏れないよう接合する「結桶技法」という伝統的技法を受け継、皇室・宮内庁をはじめ多くの神社仏閣の儀式用の桶を作っています。

木材は主として国産のサワラやヒノキを用い、時間をかけて木材を乾燥させ無塗装で磨き仕上げる手法は、木の持つ力を損なわず活かすことができると言われています。

■桶栄

〒135-0011 東京都江東区扇橋1-13-9

☎︎ 0120-979-256 (受付時間 9:00~18:00 土日祝日除く)

Webからの問い合わせ:https://www.g-call.com/shopping/pc/info/

江戸びつ7寸(2~3合用)~

線香花火/山縣商店

花火師の名跡・鍵屋が商売を始めたのが江戸初期の1600年代、1700年中盤には、今の隅田川花火大会に続く両国の川開きも始まるなど花火人気は高まりました。その後、鍵屋から暖簾分けした玉屋も創業し、この2者の功績もあって江戸の花火は隆盛を極めました。それと並行して、各地で様々な線香花火も出現します。

線香花火の名前の由来は、香炉や火鉢に立てた花火の格好が仏壇の線香に似ているところから来ていると言われ、現在の和紙で包んだ形になったのは江戸後期と考えられています。花火職人と、夏の風物詩として花火を愛する江戸ッ子たちよって、線香花火は、江戸文化の象徴となり現代まで受け継がれてきました。

しかし、1900年後半になると、線香花火も圧倒的に安い中国産に押され国産物は絶滅してしまいます。そこで立ち上がったのが山縣商店。五代目山縣常浩が中心となり、全国の花火職人を訪ね、線香花火への想いを伝え、それに職人たちも応え、2000年になって和紙、染料、火薬、製法のすべてを伝統的な製法で復活させることに成功したのです。それが大江戸牡丹です。

■山縣商店

〒111-0051 東京都台東区蔵前2-2-2

https://www.hanabiya.co.jp

大江戸牡丹

江戸染 浴衣/竺仙

1842年創業の竺仙(ちくせん)は、江戸小紋と長板中形(ながいたちゅうがた)の江戸染浴衣を扱う老舗です。

長板中形とは、江戸時代の浴衣制作技法で、長さおよそ三間半(約6m50cm)の樅の一枚板に生地を張り、小紋よりは大きめの模様が彫られた中位の大きさ(約40cm角)の型紙を用いて、表と裏別々に糊置きを行い表裏の両面柄がぴったり合ったことを確認後に藍甕で浸染染めを行った中形浴衣を指す言葉です。表裏の柄合わせがきちんとできていることを「裏が返る」と言い長板中形の真骨頂です。

絵師の描いた大柄ものと、昔の小紋型紙を利用した小柄のものがあり、両面型付け浸染本藍染のおしゃれ着です。手間がかかる職人技ですが、その絵際はきっぱりと藍が引き立ち、江戸っ子好みの潔い染め上がりを見せます。

■竺仙

〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町2-3

☎ 0120-558-529フリーダイヤル

https://www.chikusen.co.jp

綿絽(めんろ)長板小紋中形、博多帯八寸

江戸切子/清水硝子

清水硝子(しみずがらす)は、大正12年(1923年)創業、した江戸切子の老舗工房です。

江戸切子は、天保5年(1834年)に江戸大伝馬町のびいどろ屋、加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面にカットを施したのが始まりと言われています。明治時代に入ると、ヨーロッパのカットグラス技法が、工部省品川硝子製造所の伝習生たちに伝えられます。清水硝子の初代・清水直次郎は、この伝習生の一人であった今村仁之助に師事しました。

直次郎は今村のもとで修行した後、大正12年(1923年)に本所菊川町に清水硝子加工場を創業します。以来、工房は移転をしましたが、その技術とものづくりへの心は、今日の職人たちに受け継がれ、昭和60年(1985年)、江戸切子は東京都の伝統工芸品に指定され、平成14年(2002年)には国の伝統工芸品に指定されています。

■清水硝子

〒124-0006 東京都葛飾区堀切4-64-7

☎ 03-3690-1205

https://shimizuglass.com

小鉢 丸菱かごめ

籐の枕/おみねらたん

おみねらたんは、おみねらたんでは、藤製品を伝統的な製法を大切にした丁寧なものづくりで評価の高い藤製品工房の老舗です。

籐は、英名、ラタンといい、熱帯・亜熱帯に分布するヤシ科のつる性植物で、軽くて強靱・通気性に富む優れた天然素材です。日本には、遣唐使が初めて日本に伝えたとされ、しなやかで折れ曲げに強い籐は、鎌倉時代以降は、武士の装束や弓に用いられた歴史もあります。

江戸期に入ると、幕府が使用した籠などに用いられ、後期には煙管筒・土瓶釣・花活・枕など日用品、そして編笠などに利用されたことが、江戸中後期の風俗を記録した「類聚近世風俗志」に記載があります。

明治以降は、急須敷・茶盆・敷物・座布団・枕などに利用され、昭和期には車のバックレスト、ベビーブーム時には、ゆりかご・子ども椅子・脱衣カゴなど隆盛を極めました。

天然・自然素材の良さ、品質の確かさ求められる現代にあっては、あらためて籐製品が見直されています。

■おみねらたん

〒131-0045 東京都墨田区押上2-10-15

☎ 03-3623-0433

https://ratan.jp

特上籐まくら

江戸団扇/伊場仙

伊場仙は、天正18(1590年)年創業、扇子とうちわの老舗です。徳川家康とともに江戸へ上がったといわれ、江戸幕府の御用を承り江戸でその地位を確立した工房です。

また、当時の名だたる絵師の版元ともなり、その浮世絵を刷り込んだ団扇が粋な江戸ッ子たちの人気を博したといいます。持ち手と骨が1本の竹を割して作られているのは、大量生産しやすいようにとのこと。

写真の浮世絵江戸団扇絵(錦絵・大和型)は、歌川派の流れを汲んだ名匠・広重、国芳筆により、版元伊場仙が多色摺りで団扇絵として制作したもので、この唯一現存する版木画をもとに、現在でも、伊場仙が印刷・制作しているものです。

雁の群れが飛ぶ月夜の波静かな刀根川の情景で、 この刀根川の静かな情景が描かれた団扇は、いまでも高い人気を保つ団扇です。 

■伊場仙

〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町4-1

03-3664-9261

https://www.ibasen.co.jp

浮世絵江戸団扇

簾/田中製簾所

簾(すだれ)は平安時代の御簾(みす)が原点と言われ、清少納言作の枕草子の中にも、その記載が見られ、宮廷生活でも普段に簾が使われていたことがわかります。

江戸期になると、江戸の町の繁栄につれて、簾は、将軍家、大名・旗本などだけではなく、日よけや仕切りなど、商家や庶民の間にも広がりを見せ、浮世絵の中にも簾がしばしば登場します。

明治以降も、簾は一般家庭で使われ、東京都内各地で多くの簾職人が商品作りに関わってきました。

近年、安価な中国など海外からの輸入品に押され、国内で手づくりの簾を作る職人が少なくなりましたが、江戸時代にはぐくまれた伝統の技法は職人たちの間で今も受け継がれ、生活の中に風流の心をもたらすインテリアとして見直される機運もでてきています。

田中製簾所(たなかせいれんじょ)は、素材にもこだわり、使う竹は国産のみ。伝統の技法で作られた簾の普及に努めています。

■田中製簾所

〒111-0031 東京都台東区千束1-18-6

☎03-3873-4653

http://www.handicrafts.co.jp

矢羽簾(W88×H170cm)

風鈴 /篠原風鈴本舗

風鈴自体の起源は中国にあり、日本に仏教と共に日本に入ってきたもので、当時は、その音が厄除けになると考えられ、平安・鎌倉時代の貴族の間では縁側に下げて、外から疫病神を防いだと言われています。

ガラス製の風鈴が出始めるのが江戸中期・1700頃のことで、長崎のガラス職人が吹きガラスを実演、各地をまわったことに端を発すると言われています。高かったガラス製品が安くなり、江戸風鈴が人気となるのは、さらに時代がくだった明治20年代でした。

篠原風鈴本舗(しのはらふうりんほんぽ)は、江戸川区にある江戸風鈴工房で、大正4年に創業してから100年以上、江戸時代と変わらない技法で風鈴を作り続けています。写真の赤のシリーズは、当時も使われていた絵柄を採用しています。

■篠原風鈴本舗(しのはらふうりんほんぽ)

〒133-0065 東京都江戸川区南篠崎町4-22-5

☎︎ 03-3670-2512

https://www.edofurin.com

提灯/大嶋屋恩田

提灯の歴史は古く室町時代に遡りますが、江戸時代から提灯そのものを作る職人と、提灯の文字描き職人の分化が進みました。江戸手描提灯 大嶋屋恩田(おおしまやおんだ)は、提灯の文字描き専門職として、安政元年(1854年)に創業した老舗です。

現在は6代目の恩田修さんがその伝統を受け継いでいます。
昔は日用品だった提灯ですが、現在では祭の装飾やお店の看板としての用途が最も多く、あとは、祭りの需要、インテリア用品としても需要があります。

また、最近では、日本の伝統工芸品として外国人にも人気で、江戸手描提灯の独特の風合いのある絵や文字が受けているようです。

■大嶋屋恩田(おおしまやおんだ)

〒111-0043 東京都台東区駒形2-6-6

☎ 03-3841-2691

https://chochin-ya.com

ちょうちんランタン 丸

手拭い/ふじ屋

手拭の歴史は古く、奈良・平安時代から原形が存在していますが、当時は神祭具として使われていたようです。
手拭いが開花したのは江戸時代。歌舞伎や江戸の文化とも相まって、様々な絵柄が出てくるようになり、江戸っ子の間で大流行。汗をぬぐったり前掛けや帯にしたり、古くなったらハタキに。最後まで使い切る江戸のエコアイテムでした。

ふじ屋の手拭はすべて「折付注染」という技法で染められています。染めた布には裏表がなく、プリントの手拭とは一味違った味わいがあります。

■ふじ屋

〒111-0032 東京都台東区浅草2-2-15

☎ 03-3841-2283

https://tenugui-fujiya.jp

手前から、かまわぬ、青海波(せいがいは)、大小あられ

つりしのぶ/つりしのぶ 萬園

芯材に山苔を巻きつけ、しのぶ草を束ねた夏の風物詩。

江戸時代、深川の植木屋が作り、出入りのお屋敷に吊るしたことが始まり。江戸の庶民も涼感と風情を楽しみました。

萬園のつりしのぶは、昔ながらの宝船をデザインしたもので、江戸川の流れをかもし出し涼しさを演出します。

■萬園(よろずえん)

〒132-0031 東京都江戸川区松島1-32-11

☎︎ 03-3651-346

江戸川区HP:

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e032/shigotosangyo/jigyosha_oen/dento/kougeisya/fukano/gaiyo.html

深野晃正氏しのぶ玉「涼」