神社のカタチには、神様を敬い、祀るという気持ちだけでなく、さまざまな時代背景、地域の風土や特色が込められています。ここに示した神社建築や参拝方法はその一例にすぎませんが、それぞれの由来や起源を少しでも知っていれば、神社はもっと身近なものなっていくでしょう。

神社の基本的な構造

1 鳥居 (とりい)

地図などでも神社のシンボルとして使われているのが鳥居です。その由来は諸説いろいろありますが、ひとつは天照大神が天の岩屋にお隠れになった時、八百万の神々が鳴かせた鶏の“止まり木”が起源になっているというもの。このほか、インドや中国大陸から伝わったという説もあります。一般に鳥居は神社の内と外を分ける境界に立てられ、神域を示す役割を果たしています。

2 狛犬(こまいぬ)

邪気を払うため、鳥居の両側などに一対となって置かれているのが狛犬です。ペルシャやインドを起源とする想像上の生き物で、朝鮮半島(高麗)から伝えられたことから狛犬と呼ばれるようになったと言います。その姿や表情は多種多様。狛犬の代わりに、稲荷神社では狐、天満宮では牛が配されることもあります。

3 神橋(しんきょう)

神橋というと、日光二荒山神社の入口に架かる橋を思い浮かべる人が多いようですが、一般の神社でも、参道を横切る川や池に架かる橋は神橋と名付けられているものが数多くあります。社頭を流れる川などには、鳥居と同様、人の住む俗界から神域を区切る役割があるとも言います。

4 摂社・末社(せっしゃ・まっしゃ)

境内の一角にある小さな社が摂社や末社です。摂社は本殿に祀られている神様と縁故の深い神様、末社はその土地で古くから崇められてきた神様を祀る社であることが多いようです。

5 神楽殿 (かぐらでん)

神事や祭礼において、楽曲や舞いを奉納する場所。神楽堂とも呼びます。

6 灯籠(とうろう)

仏教とともに伝来した灯籠は、もともと寺院で用いられる灯りでした。これが平安時代の頃から献灯として神社にも置かれるようになってゆきました。

7 絵馬殿(えまでん)

奉納された絵馬を掲げておく場所で、建物になっているものを絵馬殿や絵馬堂、小さな屋根を付けた簡易的なものを絵馬掛所などと呼びます。神の神聖な乗り物である馬に代わって、絵に描いた馬を奉納するようになったのが絵馬の始まりで、現在のような小さな板に願い事や感謝の気持ちを書くようになったのは近世以降のことと言われます。

8 手水舎(てみずや)

拝礼の前に手を洗い、口をすすいで身を清める場所のこと。「ちょうずや」などとも言う。古い時代、参拝者は近くの川などに入って「禊」を行いましたが、手水はその名残です。

9 神門 (しんもん)

大きな神社では、参道の先に神門を設け、その先を正式な境内として玉垣や回廊で囲んでいることもあります。神門のうち、二階造りのものは「楼門」と呼ばれます。

10 玉垣 (たまがき)

神社の周囲にめぐらされる垣のことで、瑞垣、斎垣(いみがき、いかき、いがき)、神垣とも呼ばれます。樹木を配置する柴垣が最も古い形式と考えられ、神門から続く垣は回廊形式としている神社も数多くあります。また、近年は寄進者の名前を刻んだコンクリート製のものも多くなっています。

11 御神木(ごしんぼく)

神社の境内にあって、伝承などにより特に神聖視される木のこと。社殿をもたない神社では、御神木が御神体となっている場合もあります。また、神社の周囲を取り囲む不伐の木々(鎮守の森)、神社の外にあっても社殿などの造営に用いられるの木々は御神木と呼ばれることがあります。

12 社務所(しゃむしょ)

神社におけるさまざまな事務を行う場所。規模の大きな神社になると、祈祷の受付所やお守りなどを販売する授与所が別になっていることもあります。

13 瑞垣 (みずがき)

幾重にも玉垣のめぐらされた神社では、その一番内側のものを瑞垣と呼んで区別することがあります。玉や瑞はともに「美しい」「神聖な」の意。

14 拝殿(はいでん)

神社の中核を成しているのが社殿です。このうち神様を礼拝する場所が拝殿で、一般的にはお供え物などを神職が捧げ置く弊殿と一緒になっています。通常の参拝者は拝殿の前に置かれた賽銭箱の手前で参拝。一方、初穂料を納め、神職のお祓い・祝詞奏上を経て拝殿のなかで行う参拝を正式参拝(昇殿参拝)と言います。

15 本殿(ほんでん)

拝殿の先にあり、御神体を祀っているのが本殿です。ここが神社では最も大切な建物で、神職といえども、みだりに立ち入ることができない聖域となっています。また、山や巨岩、滝や御神木を御神体とする神社には、鳥居や拝殿のみで、本殿のないところもあります。

代表的な社殿の造り

神明造 (しんめいづくり)

本殿の建築様式にはいくつかのタイプがありますが、そのなかで最も古いとされているのが伊勢神宮の本殿をモデルにした神明造です。その特徴は切妻の平入り(出入り口が大棟と並行する面にある)で、屋根に反りがなく、建物の両外側に太い棟持柱があることです。このような神明造の本殿は、古代の高床式穀物倉庫が起源だと言われています。

大社造(たいしゃづくり)

神明造とともに、本殿の代表的な建築様式として知られているのが大社造です。こちらは切妻の妻入り(出入り口が大棟と直交する面にある)のが特徴で、茅葺き屋根にはゆったりとカーブを描く反りが付けられ、部屋の中央には心御柱が立っています。その名の通り、出雲大社の本殿を原型とする建築で、その起源は古代の王宮や館だと言われています。

代表的な鳥居の形態

神明鳥居 (しんめいとりい)

鳥居の形態は実に多種多様で、一説によると、そのタイプは60種類にも及ぶと言われています。そのなかで最もシンプルな形をしているのが神明鳥居。上部の笠木や柱は直線的な丸材で、それぞれが直交する形で組み上げられています。ただし、素材や色は神社によってさまざま。なかには京都府の飛行神社(日本で最初に飛行原理を研究した二宮忠八氏が創建)のようにジュラルミン製のものまであります。

明神鳥居( みょうじんとりい)

鳥居の形態として、もうひとつ代表的なものが明神鳥居です。こちらは神明鳥居に比べるとやや複雑な構造で、反りを付けた笠木の下には島木という部材があり、柱は内側に向かって少し傾斜し、笠木(島木)と貫の間には額束、柱の下には台石が加えられています。明神鳥居には数多くのバリエーションがあり、笠木と島木に反りがないものや、笠木と鳥居の上に屋根を葺いたタイプなどもあります。

お参りの作法

手水の作法

古くから日本人は、神様に願い事をしたり、感謝の気持ちを捧げる時、まず自らの心身の清浄につとめてきました。いわゆる禊です。これが現代に伝えられたのが参拝前の手水というわけです。手水の手順はおおきく5つに分けることができます。

①右手で柄杓を取る。

②水盤の水を汲み、左手を洗う。

③柄杓を左手に持ち替え、右手を洗う。

④再び柄杓を右手に持ち替え、左の掌に水を溜める。

⑤左手の水で口をすすぎ、もう一度左手を洗う。

これで手水は完了となるわけですが、神社によっては手水の前後に一度ずつ礼をしたり、⑤の後に柄杓を垂直に立て、残った水で絵の部分を洗い流すことを手順に加えている場合もあります。

拝礼の作法

神社での参拝は「二拝二拍手一拝」が基本です。まず賽銭箱の真上あたりにある鈴を鳴らしたら、半歩ほど下がって姿勢を正します。そして、二回お辞儀をした後、柏手を二度打ち、最後にもう一回お辞儀をするという手順になります。拝のとき腰は90度ほど折り曲げ、両手は膝のあたりで揃えるのが正しい作法。拍手は、まず両手を胸の前で合わせ、右手の指先をほんの少し下にずらしてから、肩幅程度に両手を広げて柏手を打ちます。出雲大社では「二拝四拍手一拝」となるように、こうした拝や拍手の手順などは神社によって異なる場合もありますので、それぞれの作法に従ってください。また、賽銭は放り投げるのではなく、お供えをするつもりで、そっと賽銭箱に入れるのが正しい方法と方と言われています。