小笠原流礼法で最も重要なことは、相手を大切に思う「こころ」です。
そのこころを、合理性と美しさで表現したのが、作法、すなわち「かたち」なのです。
礼法をまなぶことで日本人は、職場、訪問先や冠婚葬祭の場において、
女性はより美しくエレガントに、男性は凜々しくスマートにふるまうことができます。
今回は、挨拶の基本である「おじぎ」についてご説明します。

お辞儀はふるまいの代表

お辞儀には、立った姿勢で行う「立礼」と、座った姿勢で行う「座礼」があります。現代の日常生活で用いられる立礼に関して、会釈は15度、敬礼は30度や45度などと角度で表されることがあります。しかしながら、実際に角度を考えながらお辞儀をする方は少ないのではないでしょうか。相手に対する感謝やお詫びの気持ちが深ければ、自然とお辞儀の角度も深くなるものであり、それこそが自然な姿ともいえましょう。

とはいうものの、どの程度の深さのお辞儀をしているのかを知ることにより、相手に対する思いをより的確に表現できるとも考えられます。そこで、今回は、三種類のお辞儀について触れて参りたいと思います。

まずお辞儀は、正しく立った姿勢が基本です。両足の踵とつま先を揃え(男性はつま先をひとこぶし分ほど開ける)、髪の毛を上からひっぱられているイメージで、腰を意識しながら上体を整えます。両手は指を揃え、身体の脇に自然に下ろします。

立礼三種に関するポイントは、次の通りです。

<会釈>

お茶を運ぶさい、あるいは部屋の入退室のさいなどに用いられます。両脇の手が腿の前にくる程度、上体を傾けます。

<深い敬礼>

特に感謝を伝えるさい、非礼をお詫びするさいなどに用いられます。両脇の手の指先が膝頭に達する程度、上体を傾けます。 

大切な「残心」の心得

お辞儀をするさいに大切なことは、息遣いです。息を吸いながら上体を倒し、動きが止まったところで息を吐き、再度息を吸いながら上体を起します。この息遣いを「礼三息」と呼びます。

また一般的に角度が浅いお辞儀ほど、無理に頭だけを下げてしまう傾向がありますが、頭と背筋は一直線になるイメージが欠かせません。

ところで、お辞儀にはもうひとつ、大切な心得が存在します。それは、「残心」。お辞儀を終えたあと、すぐに髪の毛に手が触れたり、椅子に座ってしまう、などというふるまいは、最後まで相手に対する気持ちが表現されていません。お辞儀を終えたあとに数秒の「間」を取ることが、最後まで相手を大切に思う気持ちに繋がります。

さらには、何度もお辞儀を行うのではなく、なるべく一回のお辞儀にこころを込めることにより、相手に対する感謝や敬意の念を伝えることができると理解しましょう。