日本全国、それぞれの地域で伝承されてきたお菓子。そこで育った人が食べれば、幼い頃の思い出が甘く切なく蘇り、初めて見る人には、その名前や色形が旅情をかきたてることでしょう。ふるさとへ誘う、むかし懐かしい郷土菓子をご紹介します。
今回は北海道・東北編です。北の地方の農村にとって、米、麦、そばなどの穀類は貴重な食材。気のいい北国の人たちは、凍てつく道を辿って訪れる客人に、おばあちゃん直伝の手作り菓子を振る舞います。

北海道:五勝手屋丸缶羊かん

江戸時代初頭、蝦夷地で初めて豆の栽培に成功した「五花手組(ごかってぐみ)」にちなんで命名された羊かんで、江差(えさし)、函館など道南を代表する銘菓。ユニークな「丸缶羊かん」は、下から押し出し付属の糸で切ります。手を汚さず食べられるパッケージとして人気。五勝手屋本舗 Tel:0139-52-0022

青森県:べこもち

「べこもち」とは北海道から青森県に伝わる端午の節句の祝菓子。本来は白黒2色で牛(べこ)の姿に見立てた餅でしたが、下北地方では作り手が工夫を凝らし、独自の米粉や食紅、抹茶などを利用した美しい花模様のお菓子になっています。砂糖が入るため、ほんのり甘みのあるやさしい味です。それぞれの家庭で作られるものなので、少しずつ味や柄が違って楽しい。

岩手県:きんか餅

南部藩の三戸町発祥、お盆のお供え菓子で、小麦粉で作った餅の中に、黒砂糖、くるみ、ごま、味噌で作ったあんを入れて蒸したもの。ちぎると甘じょっぱいくるみあんが溢れ出て予想以上にしっとりとした味わい。「きんか」は、高価な食材を使うことから「金貨」や「金華」を表すといいます。きんか堂 Tel:0179-22-2740

秋田県:とうふカステラ

秋田県南部に古くから伝わる郷土菓子。水気を切った豆腐に砂糖、卵、塩などを加えてよく練りあげ、じっくり焼いた甘みの濃いお菓子で、四角い形から「カステラ」と命名されました。お茶請けの他、冠婚葬祭の引き出物などにも使われます。この店のとうふカステラは、白身魚のすり身を加えたもの。菓子司つじや Tel:022-234-1807

宮城県:仙台駄菓子

「駄菓子」には子ども向けのイメージがありますが、伊達藩のあった仙台地方のそれは歴史も味わいも別格。大変良質で評価の高い「仙台糒(せんだいほしいい)」(干した飯)が、城下に払下げになると、それを使ってお菓子にしたのだという。今では「きなこねじり」「ごまねじり」「うさぎ玉」「ごぼうきり」などユニークな名前を持つ素朴な手作り菓子に。元祖仙臺駄菓子 熊谷屋 022・234・1807

山形県:切さんしょ

山形県鶴岡市に伝わる郷土菓子で、旧七日町にある観音堂のだるま市とともに年末の風物詩とされています。山椒のガクを乾燥させ、細かい粉にしてから餅に混ぜたもので白砂糖味と黒砂糖味の2種。「切」の文字を使うのは、厄を払い新年に良きことあれと願う「縁切り」の意味。縁起菓子なのです。木村屋:0235-22-4530

福島県:玉羊羹

まるで小さな風船のように膨らんだ丸いゴムの表面を楊枝の先で突くとつるりと一瞬にしてむける「玉羊かん」は、二本松市の銘菓。もとは江戸時代から続く和菓子の老舗が、昭和初期に軍の要請で考案した戦地用のお菓子だったものですが、今ではその愛らしい形がお土産用に喜ばれています。玉嶋屋:0243・23・2121