日本では、かつて数多くの城が存在していました。しかし、建築された当時の天守がそのままの姿で残されているものは全国にわずか12城しかありません。そのほとんどは姿を消し、現在見ることができるのは新たに建設・復元されたものです。そんな現存天守は、長い歴史を積み重ねながら、今なお日本人の心に響く美しい姿を保ち続けています。
今回は、愛知県犬山市にある国宝・犬山城(いぬやまじょう)をご紹介します。
写真協力:犬山市観光協会

美しい景観をもたらす白帝城

古風な佇まいを見せる犬山城天守

別名、白帝城ともいわる犬山城。これは李白の詩に出てくる白帝城に由来するもので、木曽川を見下ろす丘の上に建つ美しい姿からたとえられています。
中山道と木曽街道に通じ、木曽川による交易、政治、経済の要衝の地に建ち、背後を川と断崖に守られる形で造られた「後堅固(うしろけんご)の城」で、1537(天文6)年に織田信長の叔父、織田信康によって、木之下城より城郭を移して築いたとされています。
木曽川に突き出た高い断崖を背にしたかたちで建てられた城は、天守を頂点に南に向かって下る斜面にそって本丸、杉の丸、樅の丸、桐の丸、松の丸が階段状に構成されており、現存する建物は天守のみですが、本丸の石垣と空堀が当時のまま残されています。

木曽川を背に建つ天守は、その美しさから白帝城とも呼ばれる

望楼型の古式な形体をもつ天守

天守は3重4階で、出入り口のある部分は地下となります。最上階の望楼には、手すりのある高欄とベランダ状の廻縁が施され、そこからは美しい木曽川の流れや市街地、そして遠くの山並みまでを望むことができます。

最上階の4階にある望楼内部

天守東の正面に入母屋破風、3階の南北には唐破風、4階には花頭窓が配置された古風な天守は、1952(昭和27)年に国宝に指定されています。また、2004(平成16)年までは、元城主である成瀬家の個人所有だったという珍しい城でもあります。

上/天守石垣部分にある入口の穴倉は、構造上地下となる。下/1階部分に設けられた石落としの間
上/1階部分にある上段の間。下/1、2階は中央部に部屋が造られ、その周囲に武者走りがある

犬山城

別名:白帝城(はくていじょう)
築城年:天文6(1537)年
築城者:織田信康(おだのぶやす)
種類:平山城
主な遺構:天守、石垣、土塁
開場時間:9:00〜17:00 休場日:12月29〜31日
問い合わせ:犬山城管理事務所 ☎0568・61・1711
所在地:愛知県犬山市犬山北古券65-2
アクセス:名鉄・犬山遊園駅から徒歩約15分
http://inuyama-castle.jp