30以上の国で栽培され、毎日世界中で飲まれている「お茶」。
チャの木はどんな植物でどこから来たのでしょうか?
そして、どんな製法で美味しいお茶になるのでしょう。
日本茶の茶葉の種類と製造方法も合わせてお伝えします。

「チャ」とはどんな植物なのでしょう?

チャはツバキ科の常緑低木で、観賞植物として広く親しまれているツバキやサザンカの仲間です。原産地は世界最古の茶書、中国の『茶経(ちゃきょう)』に見られる「南方の嘉木(かぼく)」により、四川省や雲南省あたりといわれます。学名はCamellia sinensis(カメリア・シネンシス)、葉が小さく寒さに強い灌木性の中国種と、葉が大きく寒さに弱い高木性のアッサム種などの変種があり、日本では前者が栽培されています。

中国種の場合、葉は長さ6〜10センチ、幅2〜4cmの長楕円形で肉厚、光沢をおびます。花期は10〜12月、花の直径3cm弱の白色花を下向きにつけます。アッサム種の葉は長さ20cm、幅10cmほどと中国種に比べると、ほぼ倍の大きさになります。

中国雲南省西双版納州のラフ族の茶畑
スリランカの茶畑

生育条件は年間を通して温暖で多雨、年平均気温13〜15度、年降雨量1500mm前後が必要で、雨期と乾期の区別なく、一年中平均して降るのが望ましいといわれます。 日本の場合、古くから関東以西、九州の山間部にかけて「山茶」といわれる茶樹が野生状態で確認されています。これも中国種ですが、自生なのか渡来なのか、いまだ解明されていません。後者の主張の中には、稲作と一緒にもたらされたとする説もあります。

日本の茶葉の種類

日本ではこのカメリア・シネンシスから80種を越える品種(明らかに識別できる特性をもち、同じ環境条件下で数代にわたりその形態や特性を伝える個体群)がつくられています。今日栽培されている主要品種として、次のようなものがあります。

京都・宇治茶の茶畑。

●やぶきた

静岡県の茶業家が在来種の実生(発芽したばかりの種子)選抜により育成した品種です。樹姿は直立型、葉は長楕円形で、耐寒性に優れます。収量多く、煎茶としてきわめて品質優良で、まろやかな味わいが特徴です。東北から九州、沖縄にかけてほぼ全国的に栽培されており、国内生産の8割近くを占めます。母樹(種子や接穂・つぎほをとる樹木)は静岡市内に健在で、県指定天然記念物として保存されています。

●さやまかおり

埼玉県でやぶきたの自然交雑実生(みしょう)から選抜、育成された品種です。葉は長楕円形、耐寒性に優れます。収量多く、豊かな香りが特徴で、関東一円から東海地方でも栽培されています。

●ふくみどり

埼玉県でやぶきたとさやまみどりの交配から育成された品種です。耐寒性に優れ、収量多く滋味豊か、後味のよいのが特徴です。

静岡県牧之原市の牧之原茶園。水に恵まれないため開墾されたのは明治以降だが、茶の栽培に成功してからは台地の90%が茶園となり現在では静岡の茶の生産量の40%を占める日本一の大茶園。園内には日本に茶をもたらした栄西禅師の像が立っている。

製造法の違いにより風味や味わいは異なったものになるお茶

チャの葉に含まれる酸化酵素の処理の仕方により不発酵茶、半発酵茶、発酵茶と、加熱処理後の菌類発酵による後発酵茶(こうはっこうちゃ)に大別されます。 不発酵茶は茶葉を蒸す、炒る、煮るなどして酸化酵素の働きを抑える、つまり発酵させないで製造する茶で、一般に緑茶といいます。日本の緑茶はほとんどが蒸し製、中国では釜で炒る釜炒り製ですが、日本でも九州の一部で釜炒りが行われています。

半発酵茶は酸化酵素の働きをある程度利用した製造法で、烏龍茶がよく知られています。発酵茶は酸化酵素の働きを最大限に利用し、完全に発酵させて製造するものでこれが紅茶です。後発酵茶の代表的なものは中国のプーアル茶で、その他東南アジアの茶葉自体を食べる〝食べるお茶〞もこれに含まれます。

日本茶のほとんどは蒸気で熱する蒸し製ですが、この製造法は日本に特有のもので、これによりそれぞれの旨みや香りが醸成され味わいを深めています。

上左/玉露 上右/ほうじ茶 下左/抹茶 下中/煎茶 下右/深蒸し茶。撮影:菅原浩司

日本茶のいろいろ

●煎茶

日本茶消費量の8割を占める代表種で、産地や収穫期により味わいは異なります。5月の八十八夜前後にやわらかい新芽だけを摘んだ一番茶を「新茶」といい、それ以降遅摘みになるほど等級が下がります。通常より蒸し時間を長くして渋みを抑えた製品が「深蒸し煎茶」です。

●玉露

極上品として扱われ、被覆材で太陽光を遮る「覆下 (おおいした) 栽培」で育てられた新芽からつくられます。艶があって緑濃く、細くよじれた茶葉が良質とされます。

●かぶせ茶

茶葉の栽培は玉露より簡易な被覆法、短い遮光期間で行われ、渋みが抑えられ甘みのやや優る味わいが特徴です。

●蒸し製玉緑茶(たまりょくちゃ)

製造の最終工程が異なるため勾玉(まがたま)状に仕上がるのが特徴で「グリ茶」ともいわれます。佐賀県や熊本県で生産されています。

●抹茶

玉露と同じく「覆下栽培」でつくられた碾茶(てんちゃ)を原料に、石臼で挽いて粉末状にした茶です。江戸期に煎茶の製法が確立するまではこの抹茶が主流で、茶道の世界と深く関わってきました。

●番茶

「番外茶」からきているといわれ、一番茶の若芽の後や夏以降に収穫した三番茶、四番茶、また煎茶の製造過程で除かれた硬い葉や茎でつくられます。原型をとどめたままの茶葉を煮出して飲む京番茶もあります。

●ほうじ茶

煎茶や番茶を強火で炒って独特の香りをつけた茶です。家庭でもフライパンなどで炒るだけでできます。

●釜炒り製玉緑茶

中国緑茶と同じ製法で、釜で茶の葉を炒り乾燥させて勾玉状に仕上げます。蒸し製よりも香りが豊かで、九州地方でよく飲まれています。

●漬物茶

後発酵茶の一つで、茶葉を桶などで貯蔵し、乳酸菌や酢酸菌で発酵させて漬物のように仕上げます。日本には徳島県の阿波番茶や、高知県に伝わる古典的な碁石茶などがあります。